2013年9月9日月曜日

プラスミド ラージプレップ(Plasmid large preparation)CsCl法

 遺伝子の発現調節などを調べる為にtransfectionを行うような場合には、数種のプラスミドを大量に必要とする場合が多い。あるいは、頻繁に使用する一般的なベクター、pETpBSなどは、一度に確保しておけば常に安定した結果を得ることができる。このような場合には、CsCl法が有利である。

 使用機器:
Sorval 又はBeckman冷却高速遠心機(polypropylene 38ml tube 6本以上を回せるローター)
Beckman 卓上超遠心機 (ローターTL100.4) : ベックマンの卓上超遠心機・ローターは順次モデルが新しくなっており、新しいローターではTLA-110に相当する。TubeQuickSeal5.1 ml(新しい4.7 mlのタイプを私は使用したことが無い)。

  CsCl法の前半のplasmidの抽出は、mini prepとほぼ同様である。以下に示すプロトコールは、一般的なものであり、Ethidium BromideEtBr)が吸着したsupercoilplasmidの比重がrelaxed plasmidlinear DNAより大きいことを利用している。
 遠心後のtubeの様子を簡単に示すと、CsClの水溶液は、超遠心によりgradientを形成するので、比重差によりsuper coil plasmidを左図のように超遠心tubeの中心付近に分離することが出来る。Tubeの下部はRNAにより強く光る。上部には、タンパク質その他のjunkが浮遊する。中央付近に来る2本のバンドの内、下の太いものだけを取り出す。
 EtBrの蛍光を見るので、可視化する為にはUV照射が必要である。従って、UVが直接眼に当たることが無いように十分な注意が必要である。
 又、EtBrは強い変異原性を持つので、使用には手袋を着用し、廃液の処理も十分な注意が必要である。EtBrの廃液の処理には、活性炭濾過キットなどが売られている。
 取り出し方は、1 mlの注射器と注射針を用意し、下のバンドより少し下に注射針を通す。針の穴を上向きにして、バンドの下部に当たるようにしてゆっくりと吸い出せば、きれいに吸い出すことができる。この時に、吸い出すvolumeは少ない程後の処理が容易となる。

1)操作の1-10までは基本的にmini prepとほぼ同じであり、操作3で大腸菌の固まりが残らないように完全に分散すること、操作5では、NaOH/SDSで溶液が完全にクリアになり大腸菌の濁りが残らないこと、操作6では、透明のゼリー状の部分が残らないように、ピペットなどで押しつぶしながら、総てが白いjunkとサラサラの液体と成るまで静かに混ぜることに注意する。

2)操作11の後、遠心tubeを手折るペーパーの上にひっくり返して静置し、残った液体部分を完全に除く。(plasmidのペレットが動くようであれば、ひっくり返すことはあきらめて、ピペットで残りの液を吸い取る。

3)操作122 mlの水に丁寧にペレットを溶かす。その後、操作132.6 gCsClを加えて良く溶かす。この時点で、全体のvolume2.6 mlとなる。つまり、最終的に加えた水の約1.3倍の体積となる。

4EtBrを加えると大量のjunkが出る。これは特に小volumeの遠心tubeを用いる場合には、遠心後plasmidを回収する時に邪魔になるので、操作15で簡単に室温で遠心してjunkを除いておく。

5)操作16-17で、junkを除いた液を超遠心tubeに移し、出来るだけ上部の空間を残さないように、CsCl/EtBr水溶液で満たした後、tubeをシールする。熱シールを使う場合、空のtubeを使って一度練習しておくのが良い。

6)サンプルが奇数となった時は、同じCsCl/EtBr水溶液でバランス用のtubeを作っておく。これは超遠心後に、注射器でplasmidのバンドを採取する時の練習用として使う。注射針を刺す時の加減、plasmidを採取した後、CsCl/EtBrの溶液の入った側壁に穴の空いたtubeの扱いなど、予め考えて練習しておく方が賢明である。

7)操作190.1-0.2 mlとなるようにplasmidのバンドを取り出す。この体積を小さくしておけば、以後の処理を1.5 mltube一つで処理できる。操作20-23は、例えば、plasmid溶液が0.2 mlとなったとすると、0.2 mlの水を加え、水で飽和したn-butanol1 ml加えて、ボルテックス/遠心を繰り返して、plasmid液のEtBrを完全に除く。

8)操作24では、最初に採取したvolumeが多めの場合には、CsClの沈殿が出るが、気にせずspin downし、CsClの沈殿が出なくなるまで、操作26を繰り返す。

9)このプロトコールは基本的に、扱うvolumeを小さくしているので、RNAの混入は増える傾向に有る。これを除き、更に余計な不純物を除く為には、0.4 mlの水にペレットを溶かした後、mini-prepで述べたDNAse free-RNAse処理の後、PEG/NaCl溶液(20% PEG 8000/2.5 M NaCl)を0.24 ml加えて、spin downし、EtOH Washの後、0.2 mlの水に溶かし、7.5 M NH4AcO溶液を0.1 ml加えてspin downして、上澄みを新しい1.5 ml tubeに移して、0.6 mlEtOHを加えてspin downEtOH washの後、0.05-0.1 mlの水に溶かす。EtOH washの目的は、塩を除くことにあるので、いずれの場合にもボルテックスなどはせず静かに加えて、そのままspin downする。
 
CsCl Plasmid Preparation
1.   O/N culture in 200 ml TB.
2.   Spin down (3000g, 10min).
3.   Suspend in 2 ml Lysis bf. (1mg lysozyme).
4.   Inc. room temp. for 10 min.
5.   Add 4 ml SDS-NaOH sol., gently mix until E. coli is lysed, and place on ice. (Solution will be yellow and viscous.)
6.   Add 3 ml 3M KAcO (pH4.2), gently mix and keep it on ice. (Yellow and viscous solution will disappear.)
7.   Spin down (10,000g, 10min) at 4oC.
8.   Transfer sup. into a new tube.
9.   Add 0.6 vol isopropanol and mix.
10.  Spin (10,000g, 10min).
11.  Discard sup. and remove the trace of sup completely.
12.  Dissolve pellet in 2 ml water.
13.  Add and dissolve 2.6 g CsCl.
14.  Add 210 ml ethidium bromide (10mg/ml in water). (Caution: Ethidium bromide is a powerful mutagen.)
     (80 ml ethidium bromide for 1 ml CsCl-DNA solution)
15.  Spin for 10min (10,000g).
16.  Transfer sup. into a heat seal centrifugation tube.
17.  Fill the tube with CsCl-ethidium bromide (1 ml water: 1.1g CsCl: 105 ml ethidium bromide) solution.
18. Centrifuge at 75,000 rpm (TL100.4) O/N at 20oC.
19.  Isolate and transfer (into 1.5 ml tube) the visible plasmid band from side using needle. (The isolated volume will be 100-200 ml.)
20.  Add 1 vol water and 1 ml n-butanol.
21.  Vortex, spin for 1 min, and discard upper phase.
22.  Repeat the extraction of ethidium bromide until all the pink color disappears.
23.  Adjust the volume to 400 ml by adding water.
24. Add 20 ml NaAcO and 1 ml Ethanol.
25.  Spin for 10min and discard sup.
26   Dissolve the pellet in 400 ml water, and add 40 ml NaAcO and 1 ml EtOH.
27.  Repeat 26.
28.  Wash the pellet with 75% EtOH (spin).
29.  Remove EtOH completely by pipetting.
30. Dissolve the pellet in 50-100 ml water.

Lysozyme bf.
       25 mM Tris-HCl (pH8.0)
       10 mM EDTA
       50 mM  Glucose

SDS-NaOH sol.

       0.5 g  SDS
       0.4 g  NaOH

5 M KAcO (pH5.2) (refere to Molecular Cloning)

10 mg/ml             ethidium bromide (in water)


3 M NaAcO (pH5.2)