2013年5月31日金曜日

大腸菌で発現したタンパク質の精製4:Ni-NTA Agaroseの具体例2

前回示したプロトコールに従って、蛋白質を精製する際の注意点について説明する。

1)カラムの選択

不満はあるが、私は、Bio-RadEcono-Column Chromatography Columns (2.5 x 10 cm)を多用している。従って、以下の記述は総て内径2.5 cmのカラムを使用した際の話である。これに、Ni-NTA agaroseが約4 cm程度の見やすい高さとなるように詰めて、自然落下で使用する。

カラムの先端に短いシリコンゴムを付け、その先に1滴の大きさが同じになるようにyellow tipの上部の太いところを切り除きシリコンチューブに入るようにしたものを取り付ける。流速は、ねじ式のストッパーをシリコンゴムのところに付け、ねじの絞りで調整する。(プラスティックのものが軽くて扱い易い)

 

2)流速

affinityカラムであるので、吸着、洗浄はかなり早め(56秒に1滴)で良いが、溶出はゆっくりと(12秒に1滴)出して、少ない体積で、濃い蛋白質溶液を得るようにする。

内径2.5 cmのカラムを使ってこの程度であり、これより細いカラムを使うと流量の調節が難しくなり、時間ばかり掛かる割にきれいに精製できないことになる。

例えば、内径1 cmのカラムを使えば、カラムの断面積は5分の1以下になる為に、同じ流速で出そうとすれば、1分に1滴落ちるような流速で溶出する必要がある。

図はP450c21の洗浄の様子を示したものである。カラムの上部に赤いバンドがあり、その下に薄く黒いバンドがゆっくりと下がっているところである。何も吸着していない状態ではNi-agaroseは青いので、P450が上部の濃いところだけではなく、薄くカラム全体に吸着していることが見て取れる。十分に洗浄ができた時点で、溶出を始めると、ゆっくりと上部の赤いバンドが濃縮されながら下がって行く。P450は赤い色がついているので、流速が速ければバンドが乱れたり、十分溶出されなくなるのが肉眼で容易に観察できる。

 

Bio-Radのカラムは、下部が黄色のカバーで覆われている為に、フィルターのすぐ上の部分が見えないことが不満である。実は、色の無い蛋白質の精製でも、溶出時はバンドの部分の蛋白質が濃くなり屈折率が変化する為に、溶出の様子が分かることが多い。従って、フィルターのすぐ上の部分を見えなくしてしまっているのは残念である。

 

3)ペリスターポンプを使わない理由

ポンプを使うとカラムもオープンでは扱えず、大腸菌からの抽出液を通す際にもポンプを使わざるを得ない。通常はカラムのin側にポンプをおくことになるが、樹脂が加圧状態となり易く、特にP450のような膜蛋白質では、凝集の原因となる。また、ポンプを使うと全体に装置が煩雑となり、トラブルの原因が増える傾向がある。同じP450でも、バクテリアのP450のような可溶性蛋白質の場合には、あまり凝集の心配をする必要はなく、agaroseを担体として選択する意味も無い。しかし、逆にポンプを使用する理由も特にない。

2013年5月27日月曜日

大腸菌で発現したタンパク質の精製3:Ni-NTA Agaroseの具体例1


以下に、Ni-NTA agaroseを用いた精製の具体例を示す。

必要なバッファー:
Buffer A:
 50 mM     KPi (7.4)
500 mM    NaAcO
20%          Glycerol
0.1 mM    DTT
0.1 mM     EDTA
1.5%         NaCholate
1%            Tween 20
0.1 mM     PMSF

Buffer B:
 50 mM     KPi (7.4)
500 mM    NaAcO
20%          Glycerol
0.1 mM     DTT
0.1 mM     EDTA
1.5%         NaCholate
1%            Tween 20
0.1 mM     PMSF
20 mM      Imidazole (0.136 g/100 ml)

Buffer C:
20 mM      KPi (7.4)
20%          Glycerol
0.1 mM     DTT
0.1 mM     EDTA
1%            NaCholate
0.5%         Tween 20
0.1 mM     PMSF
20 mM      Imidazole

Buffer D:
100 mM   Imidazole-AcO (7.4)
20%         Glycerol
0.1 mM    DTT
0.1 mM    EDTA
1%           NaCholate
0.5%        Tween 20
0.1 mM    PMSF


注1)KPi (7.4)は、500 mMのリン酸バッファーをオートクレーブにより滅菌し、保存したものを使用。
注2)Buffer A, B, Cは、PMSFを除く総てを含む溶液を調整した後に、NaOH水溶液、又は酢酸でpH7.4に合わせる。(重要)
注3)Buffer Dは、Imidazoleはパクダーで加え、PMSFを除く総てを加えてから、酢酸にてpH7.4に合わせる。
注4)PMSFは総てのケースで、使用の直前に加える。

操作:
0) 蛋白質は、buffer Aで細胞から抽出したものを使用する。
1) 前日にNi-NTA agaroseを高さ3-4 cmとなるようにカラム(内径3 cmのオープンカラムを使用)に詰め、Buffer Aで平衡化する。
2) 大腸菌抽出液をカラムに通す。流速は、6秒に1滴が落ちる程度。
3) 大腸菌抽出液が総て通り、樹脂の上に2 mm程度を残すのみとなった時、スポイドでbuffer Bを取り、カラム上部の壁を洗うように回しながら、樹脂の上部を乱さないように、buffer Bを樹脂の上5 mm程度になるまで加え、再び、樹脂の上に液が2 mmとなるのを待って、もう一度同じことを繰り返す。この操作で、カラムの壁についた蛋白質を奇麗に洗い流すと同時に、大腸菌抽出液を完全に樹脂の中に通してしまう。その後、樹脂の上部を乱さない様に、buffer Bをカラムの上まで加える。buffer Bが減ってきたら更に追加し、全量で50 mlbuffer Bでカラムを洗う。
4) 次に、同じ要領で、buffer Cでカラムを洗う。この行程は、イオン強度を落とす目的がある。
5) buffer Cが樹脂の上2 mm程度になったとき、同様にしてbuffer Dに切り替え、目的の蛋白質を溶出する。溶出の流速は、12秒に1滴くらいまで遅くする。全体で50 ml程度のbuffer Dを用いて、目的蛋白質を完全に溶出する。
6)    溶出した蛋白質は、解析用に少量のサンプルを1.5 mlのチューブに取り、総て液体窒素で凍らせて、-80度で保存し、活性、SDS-PAGEなどで確認した後、プールするフラクションを決める。


注1)2−5までの行程が、1日で終わるように時間調整する。
注2)目的蛋白質が出始めた最初のフラクションは捨てる。
注3)翌日、buffer D 25 mlでカラムを洗った後、buffer Aで平衡化しておくと、そのまま次の精製に使用できる。3回くらいは使用可能で、3回使った後、樹脂は捨てている。樹脂を再生して使用する方法も発表されているが、手間と効率を考えると、勧められない。

高齢化社会で労働者人口は減少する?


 高齢化社会となり、65歳以上の人口が三分の一を超えるようになることに対して、だから労働者人口が減少し、これを補う為に外国人の労働者を受け入れる必要があると論じる向きがある。一方で、大卒の就職難で、大学を卒業しても正規雇用の職に就けない若者が増加している。
 更に、雇用の流動性を高めるために、労働者の解雇の条件を緩める必要があると議論する向きもある。私には、これらの議論は、物事を短絡的に結びつけて、為にする結論を主張しているに過ぎないように思える。

1)高齢化社会において労働力の減少は起こるのか。
 高齢化社会の到来で労働力の現象が起こることの理由は、現状の雇用制度と定年制を前提にしているからであり、より柔軟な雇用制度を導入し、労働者人口の減少を防ぐ努力が先に有ってしかるべきである。日本国民は、憲法により働く権利を保障されている。本人が働きたいと希望し、健康で働ける能力があれば、ただ一定年齢に達したからという理由で、働く権利を奪われる理由は何処にもない。これは一種の年齢差別というべき社会慣習 である。
生産性を上げる為に、給与の高い者には早めに辞めてもらいもらい、若く給与の安い者を雇いたい。この考え方が、長い間定年制を支えてきた。ここで言う生産性とは、経験者も未経験者も同レベルの仕事ができることが前提であり、同じ仕事ができるならば、支払う給与は安い方が、金額で見た生産性は上がるに決まっている。この種の前提を曖昧にした議論によって、高齢化社会が大変であるとしている。
米国では、基本的に定年はなく、本人が働き続けたいと思えば働き続けることができる。色々と問題がない訳ではないが、高齢者の人口の割合が増えるのであれば、定年制度を廃止することが多くの問題を解決するのではないか。
 年金を受給できる年齢に達した高齢者が働き続けたいと希望すれば、年金を一部受給し、その分会社からの給与を減額するような形を取れば、年金の支払総額は大幅に減少し、企業の人件費負担も軽くすることができる。その為には、柔軟な年金制度として、いくつかのパターンで本人が受給額を決められるようにすることが必要である。

2)何故若者の就職難が起こるのか。
 大学生が全員黒いスーツで就職探しに奔走し、なかなか決まらない為に、本来大学の4年生で身につけるべき知識と技術が何処かに飛んでしまっている。どうも人手は余っているらしい。
 高齢化社会で労働人口が減少するから外国人の受入を推進しないと大変だという話とは大いに矛盾する。
 労働力は足りないが、正社員ではなく、もっと給与の安い非正規雇用の労働力が欲しいということのようだ。

3)労働力として外国人を受け入れる必要があるのか。
 明らかな論旨は、賃金の安い、非正規の労働力を雇いたいということである。研修・技能実習と称して外国人労働者を受け入れ、低賃金で過酷な労働に駆り立てることは、新しい奴隷制度を構築しようとしているに等しく、ただの犯罪行為である。
本来、国際貢献の目的を持って創設されたはずの制度が、技能実習とは名ばかりの単純労働を低賃金で強制することに用いられている。少なくとも、日本で身に付けた知識と技術を帰国後に役立てて母国の発展に資するなどという理想とは正反対のことが行われている。
 介護の分野で外国人を受け入れようとしているようであるが、これもまた本末転倒も甚だしく、比較的良心的な雇用者であっても、単に賃金が安い為に日本人がやりたがらない重労働を外国人研修者にやらせようとしているに過ぎない。安い給与で研修という名の重労働を行わせ、介護士の国家試験に受かるように多少の援助はするとしても、受かったからと行って、彼らにどのような明日があるのか。2-3年日本で働いた後に帰国して、彼らが身につけた知識と技術が母国でどのように役立ち明るい未来を描くことができるのか。日本において良心的な雇用主から多少はましな、しかし日本人から見れば安い、賃金を得て多少の預金を持って帰国はできるかもしれない。日本での多少の貯金は、母国では大金であるかもしれないが、彼らが日本で身につけた単純作業の経験が母国で新しい人生を開く為に役立つことがないのはいうまでもない。

4)グローバル化社会の構築
 果たして、日本人でグローバル化を望んでいる人などいるものだろうか。日本を外国人に対して開くということを本当に望んでいる日本人がどれほどいるものだろうか。
日本政府は、外国人が国内で働き収入を得ることに寛容ではない。それでも低賃金の労働者を得たいという需要があり、国際貢献を目的に始められた外国人研修制度が歪められ利用されて、様々な問題を生じてきた。
 グローバル化と称して、英語が話せるようになりたい願望を刺激して、グローバル化が時代の必然のように言いなされている。より多くの日本人が海外で働くことに対し、日本に暮らしている人たちが不快感や不安感を覚える必然は多くない。しかし、より多くの日本人が海外で働くということは、より多くの外国人が日本で働くことを導くものである。
 文科省は、闇雲に日本の大学の外国人の割合を増やしたいと考えているようだ。外国人教員の数を増やし、外国人留学生の数を増やそうとしている。しかし、日本で学んだ留学生達が希望を持って帰国できる環境が整っているケースは極度に少なく、一方で、日本の大学院で博士号を取得しても日本国内で正規雇用の職に就ける様な受け皿も極度に少ない。結果的に、日本で博士号を取った留学生達は、アメリカでポスドクとして働き、その後アメリカの企業に就職を決めることとなる。アメリカの方が企業の受け皿も多く、また永住権も取得し易いという背景がある。
 結果的に、高い教育と経験を持った外国人は、日本では受け皿が無く安定した職を求めてアメリカへ行く。そして、倫理的な問題があろうと低賃金の労働者を求めるような雇用者達は、外国人研修制度を利用して低賃金でも文句を言えない外国人労働者を奴隷のようにして使う。このような出稼ぎ労働者達に正規雇用の希望はなく、雇主の都合が悪くなれば真っ先に解雇され、頼れる者もなく行き場のない日本という外国で路頭に迷うこととなる。当然犯罪は増加し、社会不安が増すこととなる。
 習慣も言葉も異なる外国人を受け入れる環境が日本には乏しく、グローバル化を唱える大企業であっても、日本国内で働く人材として外国人を雇用する覚悟はほとんどなさそうである。

2013年5月25日土曜日

原子力発電考2:未完成技術の商業的利用


原子力発電は、未だ商業利用レベルに達していない科学技術を、無理矢理に商業利用しているのが現状であろう。

1)事故対応技術の不足。
どのように優れた機械であろうと、定期的な検査によるチェックと部品交換などのメンテナンスは必要であるが、定期検査を行っていてもなお、作動不良は起こりうるし、予期せぬ事故というものは起こる。それは、壊れない機械が存在しないことからも容易に想像がつくことである。問題は、事故が起こった場合の対策である。信じがたいことに、福島の事故のような放射性物質による汚染が起こったとき、作業員が近づくことができないことは常識として考えられたはずであるが、ロボット利用が全く準備されていなかった。これは、そのレベルの事故が起きた際の対策を全く考えていなかったことを示すものである。どこかのバルブが制御室から動かせなくなった時、一つ間違えば大量被爆により命を失う覚悟で、作業員が駆けつけて人力で動かすか故障箇所を修理するしか無い。映画であれば、ヒーローは死なないが。
まずは、事故を想定した過酷な環境で必要な作業、活動ができるロボットの開発が急務である。私は最近のデジカメなどの光センサーがどうなっているのか知らないが、強いガンマー線が存在するような環境では、瓦礫をかき分けて爆発現場に入り、映像その他の現場データーを送れるロボットを作るだけでも簡単ではなさそうである。

2)放射性廃棄物処理技術の未熟
福島の原発ほどの大事故でなくとも、何らかの事故により、放射性物質が漏洩した場合、土壌汚染、水又は海水の汚染、大気への放射性物質放出による汚染が考えられる。しかし、福島原発の事故後の対応を見る限り、汚染された冷却水も処理できずにただたまっているのみである。事故後に問題となった、実は現在でも大問題の、関東地区の浄水場での汚泥の高いレベルの放射性物質(おもに放射性Csであろう)による汚染についても、これらの汚泥は単に集められ、積み上げられるのみである。除染として、汚染地域の土壌を削り取ってみても、ただ削り取った土壌を集めておいておくだけで、除染が進めば進む程、高い放射線レベルの土壌の山ができるのみである。
汚染冷却水は、濾過処理により放射性物質をある程度まで濃縮し、体積を減らすことはできるかもしれないが、濃縮した放射性の汚染水は、これもただためておくだけである。しかも、濾過・濃縮装置の運転中に事故が起きない保証も無く、どのように自動化してみても要所には作業員の操作が必要となる。そして、テレビなどで見る限り、ガンマー線を遮断できるような防護服を着て作業しているようには見えない。
浄水場などの汚泥、除染により削り取った土壌などを、単に積み上げて置いてあるが、将来は何処かに漏洩の無いような埋め立て施設を作り埋め立てるしかあるまい。しかし、気が遠くなるような膨大な土壌の量であり、しかも、作業には人間が関与せざるを得ず、作業員の被爆が問題となることが目に見えている。更に、埋め立てて貯蔵しても、30年、40年と経つうちには必ず老朽化などによる漏れが問題となってくるであろうし、半減期を30年と考えても、30年も経ってまだ放射線レベルは半分にしかならないのである。

3)使用済み燃料の廃棄処理、リサイクル技術の未確立
かつて、化学工業発展の過程では、工場から出る排気ガス、排水、廃棄物の処理設備が不充分なままに数多くの工業団地が作られ、日本は世界有数の公害国となった経験を有している。日本中の空が汚染され、光化学スモッグに悩まされ、四日市、川崎は呼吸器系の疾患で世界にその名を知られた。日本中の河川、海域が汚染され、海水浴場は閉鎖されて、海岸に海水プール付きの施設が作られ、海は見るだけとなった。多くの川には黒い水が流れて、魚も住めない状態にまでなっていた。更に、産業廃棄物の不法投棄は後を絶たず、特に有害化学物質を含む産業廃棄物の不法投棄は大きな社会問題となった。日本人は、長い時間をかけて、排気ガス処理技術、排水処理技術、廃棄物処理技術を開発・導入し、ようやく、大気汚染、水質汚染などの悲惨な被害が収まって来たところである。

政府も産業界も過去の公害問題に何も学ばなかったかのように、原子力発電に関しては、再び、電気を作ることのみで、先に生じる多くの問題を先送りにしたまま、強引に、次々と原子力発電を建設し稼働させた。

使用済み核燃料のリサイクルは国内では行えず、フランスに送り、処理して再度日本に運び再処理核燃料として原発に使用する話ではあるが、問題は多い。何よりも大きな問題は、フランスの再処理工場で放射性物質を環境に放出しているに違いないと考えられる点、もし事故が起これば、更に重要な環境汚染が起こるであろうと予想される点である。フランスでやっていることだから知らないですまされる問題ではなく、日本がフランスに依頼して処理をしている以上、日本はここからの環境汚染に無責任ではいられない。

国内では、青森県の六ヶ所村に再処理工場があるが、莫大な資金(2兆円を超える)を投じて推進して来たが、本格稼働には至っていない。これは、幸運なことであり、日本政府は、福島の原発事故以前の強引な姿勢で推進して来た再処理工場計画について、六ヶ所村が稼働した際の放射性物質による環境汚染、安全性について、再度公開するとともに、安全基準について見直すべきである。

大腸菌で発現したタンパク質の精製2:Ni-NTA Agarose


6xHisのタグを持つ蛋白質を精製する場合について述べる。

かつて、20年も前に、私が大腸菌での発現などをはじめた頃は、まだ、PCRのプライマーに用いるoligo-nucleotideの合成がかなり高価であり、経費節約の為に4xHisと短くして発現精製したこともあった。 しかし、 4xHisの場合、低い条件で溶出されるため、十分に精製の純度を上げることに問題があり、現在は、oligo-nucleotideの値段も易くなっているので、総て6xHisとして発現精製している。

Hisタグを付けた発現蛋白質の精製は、目的によるが、結晶化のように高い純度を目指すのであれば、Ni-affinity, DEAE-Sepharose, CM-Sepharoseのように3種の異なる性質のカラムを用いて、3段階で精製するのが良い。

まず、Hisタグを持つ蛋白質の精製の為のaffinity樹脂としての選択肢は、最近では数が多い。
金属としては、NiまたはCoを選んで問題はない。Ni-affinityはブルー、Co-affinityはピンク色をしている。P450のようなヘム鉄を含む蛋白質(赤い色の蛋白質)を精製する場合には、ブルーのカラムの方が吸着の様子がよく見えるので、私は、特に理由がない限り、Ni-affinityを使用している。
担体としては、各自の対象とする蛋白質により選択する必要があるが、細菌の可溶性の蛋白質を大腸菌で発現精製するような場合には、担体としての扱い易さだけで考えても問題は起きない。私が主に扱ってきた動物のステロイド合成系のP450は、疎水性の強い膜蛋白質であり、カラム上で凝集して回収できなくなる場合もあり、カラム上での凝集を避ける為に、相対的に体積当たりの吸着量の少ないNi-NTA agarose (Qiagen)を用いてきた。(agaroseの担体は、相対的に強度が弱いが、それを知って丁寧に扱えば問題とはならない。)

カラムサイズ:
affinity ではHisタグを持つ蛋白質のみが特異的に吸着する為に、大部分の大腸菌の蛋白質は樹脂に吸着せずカラムを素通りするので、大腸菌の蛋白質がカラムに吸着してカラムの吸着容量が奪われることを考える必要が無い。従って、樹脂の吸着容量から計算して、Hisタグを持つ蛋白質の量(発現レベルから計算)の2倍程度が吸着できる樹脂の体積を使用する。
吸着と溶出の条件がはっきりしているので、使用するカラムは、扱い易い範囲で、太く短い方が良い。

次回に、Ni-NTA agaroseカラムでのウシCYP21-6xHisの精製を具体的に述べる。

2013年5月21日火曜日

大腸菌で発現したタンパク質の精製1:タグ

大腸菌でタンパク質を発現する目的の大部分は、ヒトのタンパク質などのように直接臓器を大量に採取して、タンパク質を精製することが難しい対象を詳細に解析するためである。
大量の精製された純度の高いタンパク質を得ることができれば、良い抗体を作ることも容易であり、抗体を用いた様々な解析が可能となる。また、in vitroでの再構成系を作り、タンパク質の生理活性を詳細に解析したり、NMR, X-線などによる構造解析も可能となる。現在では、可溶性のタンパク質は結晶化も容易になり、結晶構造からタンパク質の生理活性の本質を探ることも可能となっている。

ここでは、生理活性を有するタンパク質として大腸菌で発現し、精製することを考える。精製を目的とした場合、N-末端かC-末端にタグを付けて、アフィニティーカラムにより精製するのは常套手段である。主に使用されているのは、N-末端にグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GSTase)を付けた融合蛋白質として発現し、グルタチオン-セファロースなどにより精製した後、必要に応じてグルタチオン-S-トランスフェラーゼの部分を特異的プロテアーゼにより切断する方法、N-末、又はC-末に6xHis(ヒスチジン6個分のコドンを付け加えた形)を加えた蛋白質として発現し、Ni-、又は、Co-affinity columnで精製する方法がある。6xHisは小さいため、通常は、活性測定、結晶化などの邪魔にはならないので、切断せずそのまま目的の解析に使用される。両者ともに、精製の方法、理論的背景は、これらのアフィニティーカラムを販売しているところから一応のものを容易に得ることができる。
GSTaseを用いる方法は、精製の効率、その後のプロテアーゼによる切断/回収の効率、及びこれらの操作の煩雑さを考えるとあまり有利な方法ではない。Promega、又は、GE Healthcare Life SciencesでGST fusionの発現ヴェクター、精製用の樹脂(Glutatione-Sepharoseなど)を入手できる。

従って、特別な理由が無い限り、6xHisを使用することが容易であり、簡便でもある。6xHis Tagは特別な発現ヴェクターの必要はなく、標的蛋白質の末端にヒスチジンのコドンを6個加えるだけである。精製の為の樹脂(Ni-agarose, Co-agarose, Ni-Sepharose, Co-Sepharoseなど)は、様々な購入先がある。

その他として、マルトース結合蛋白質との融合蛋白質として発現精製する方法もあるが、使用頻度は全2者に比べ少ない。私もこの系を使用した経験は無い。結晶化が困難な膜蛋白質を、相対的に大きな可溶性蛋白質であるマルトース結合蛋白質との融合蛋白質とすることで、全体的に大きな可溶生蛋白質とし、融合蛋白質のままで結晶化することができ、膜蛋白質の構造を得ることができた例がある。

注)膜蛋白質を扱う場合、樹脂の担体volume当たりの吸着容量が高いものを選ぶと、樹脂上で目的蛋白質が凝集して溶出効率が悪くなることがある。



2013年5月15日水曜日

研究者の非正規雇用2

研究者の非正規雇用は拡大の一途をたどっている。

この大きな原因の一つは、特任教員という非正規雇用の教員の地位を作り上げたことにある。ポスドクを大量に増やし、次にはその受け皿としての助教のポジションの数が足りなくなり、しかし、公務員の定員削減の考えは維持する必要がある為に、そのまま、特任助教という非正規雇用の地位を作った。

 つまり、教授となって、給与を支払えるだけの研究費さえ獲得すれば、ポスドク、特任助教を何人でも雇用できる制度である。これがエスカレートして、特任助教だけではなく、特任講師、特任准教授など、研究費を獲得しさえすれば、非正規雇用であれば、何人でも雇って研究をすることができる。

この制度の非常に大きな問題は、 一度人件費を十分に払える研究費を獲得すれば、人員を増やし、見かけの研究成果をあげることは容易であり、同じ研究者が研究費を獲得し続けることができることとなり、研究費の大きな偏りが増幅される一方となることにある。つまり、東大や京大に一極集中する傾向を助長する。さらに、東大や京大の抱える非正規雇用の研究者数も増加の一途をたどる結果となる。

正規のポジションの数が増える訳でもないので、非正規雇用の研究者は、見かけだけはポスドクから特任助教、特任講師と地位が上がっているように見えるが、いつまでも非正規雇用であることには変わりが無く、負の連鎖から抜けようが無くなってしまう。その結果、大型の研究費の獲得が継続できなくなった時点で、次の職探しに奔走する研究者が続出する。実際には、最初から研究者はみな正規雇用の職員を希望しているので、ポスドクとなった時点で、正規雇用の職探しに奔走することとなる。また、正規の職に就く為には、研究業績の見かけを良くすることが必要である為、本来の目的である研究に専念するのではなく、一つでも多くの論文の共著者となるべく、あるいは、少しでも見かけの良いジャーナルの論文の共著者となるべく、あるいは、教授のご機嫌取りの政治的な思考に明け暮れることとなる。

米国のNIHではジャーナルのインパクトファクターは研究者の能力を評価するには不適当であり、論文の価値を測るものでもないという勧告を出している。しかし、日本では、明らかにインパクトファクターを持って研究者の能力であったり、論文の価値を測ることを続けている。NatureやScienceのようなインパクトファクターの高いジャーナルに掲載された論文の共著者として名前が載れば、本人は何もしておらず、論文を読んでさえもいなくとも、就職の助けとしては非常に大きな効果を発揮するのが現実である。これは、米国でも勧告を出さないといけない程に、インパクトファクター進行が進んでいるのが現状である。

このような傾向がエスカレートすれば、研究結果のでっち上げにより、論文を多く出す、あるいは有名なジャーナルに掲載されることを目指す研究者が生まれることとなる。残念なことに、このような研究者もどきでも、地位を得てしまえば自分で実験をすることはなくなり、ついに表沙汰とならないままとなる。



2013年5月8日水曜日

火傷の応急処置: 火傷は冷やす?

やけどの応急処置は、冷たい水で冷やすと書いてあるものが多いが、恐らくこれは間違っている。

やけどに対しては、すぐに体にかけても寒くない程度の水ともぬるま湯ともつかない程度に、蛇口の水の温度を調整して、 そっと幹部の少し上から流し続ける。幹部が広い場合には、マグカップのようなものに受けて、それを広い範囲に流し続ける。
15分から20分程流し続けると、まず痛みが消える。
更に流し続けると、やけどの赤みも消える。
赤みが消えてから更に10分から20分流し続けると、通常は、水ぶくれにもならず、そのまま収まってしまう。

焼けこげて皮膚が破れているような場合は?
それでも、そのまま同じ要領で、痛みが消え、赤みが消え、更に流し続けた後に、消毒して傷として扱えば良い。やけどというよりもただの傷としてなおってしまう。

子供がやけどをする機会は多い。親としては、自分が小さなやけどをした時に、上記の方法を試して匙加減を試しておけば良い。重要なことは、冷やす必要は無いと言うことである。体温以上に上がらないように患部の熱を取り続けるのか、流し続けることにより何かを洗い流しているのかは定かではない。ともかく、冷やすと考えれば子供が熱湯を腹にかけてしまった時にはなす術が無いが、寒いと感じない程度のぬるま湯、恐らく体温程度、をかけ続ければ良いと考えれば、胸でも、腹でも、長時間かけ続けることができる。そして長時間かけ続けることが大事である。

この方法の科学的根拠は、私が自分の小さなやけどで試した経験、子供がやけどをした際に流し続けてことなきを得た経験のみである。従って、科学的な根拠は無いというべきであるが、手足に小さなやけどをした際に、実際に試してみることは誰にでもできるし、試しておく価値はあるように思う。自分で試しておけば、子供がやけどをした時にも、慌てずに応急処置をすることができる。

医師はどのように習っているのか、またどれほどの経験に基づいて、あるいは科学的根拠に基づいて冷やせば良いと考えているのか知りたいところである。