2013年5月25日土曜日

原子力発電考2:未完成技術の商業的利用


原子力発電は、未だ商業利用レベルに達していない科学技術を、無理矢理に商業利用しているのが現状であろう。

1)事故対応技術の不足。
どのように優れた機械であろうと、定期的な検査によるチェックと部品交換などのメンテナンスは必要であるが、定期検査を行っていてもなお、作動不良は起こりうるし、予期せぬ事故というものは起こる。それは、壊れない機械が存在しないことからも容易に想像がつくことである。問題は、事故が起こった場合の対策である。信じがたいことに、福島の事故のような放射性物質による汚染が起こったとき、作業員が近づくことができないことは常識として考えられたはずであるが、ロボット利用が全く準備されていなかった。これは、そのレベルの事故が起きた際の対策を全く考えていなかったことを示すものである。どこかのバルブが制御室から動かせなくなった時、一つ間違えば大量被爆により命を失う覚悟で、作業員が駆けつけて人力で動かすか故障箇所を修理するしか無い。映画であれば、ヒーローは死なないが。
まずは、事故を想定した過酷な環境で必要な作業、活動ができるロボットの開発が急務である。私は最近のデジカメなどの光センサーがどうなっているのか知らないが、強いガンマー線が存在するような環境では、瓦礫をかき分けて爆発現場に入り、映像その他の現場データーを送れるロボットを作るだけでも簡単ではなさそうである。

2)放射性廃棄物処理技術の未熟
福島の原発ほどの大事故でなくとも、何らかの事故により、放射性物質が漏洩した場合、土壌汚染、水又は海水の汚染、大気への放射性物質放出による汚染が考えられる。しかし、福島原発の事故後の対応を見る限り、汚染された冷却水も処理できずにただたまっているのみである。事故後に問題となった、実は現在でも大問題の、関東地区の浄水場での汚泥の高いレベルの放射性物質(おもに放射性Csであろう)による汚染についても、これらの汚泥は単に集められ、積み上げられるのみである。除染として、汚染地域の土壌を削り取ってみても、ただ削り取った土壌を集めておいておくだけで、除染が進めば進む程、高い放射線レベルの土壌の山ができるのみである。
汚染冷却水は、濾過処理により放射性物質をある程度まで濃縮し、体積を減らすことはできるかもしれないが、濃縮した放射性の汚染水は、これもただためておくだけである。しかも、濾過・濃縮装置の運転中に事故が起きない保証も無く、どのように自動化してみても要所には作業員の操作が必要となる。そして、テレビなどで見る限り、ガンマー線を遮断できるような防護服を着て作業しているようには見えない。
浄水場などの汚泥、除染により削り取った土壌などを、単に積み上げて置いてあるが、将来は何処かに漏洩の無いような埋め立て施設を作り埋め立てるしかあるまい。しかし、気が遠くなるような膨大な土壌の量であり、しかも、作業には人間が関与せざるを得ず、作業員の被爆が問題となることが目に見えている。更に、埋め立てて貯蔵しても、30年、40年と経つうちには必ず老朽化などによる漏れが問題となってくるであろうし、半減期を30年と考えても、30年も経ってまだ放射線レベルは半分にしかならないのである。

3)使用済み燃料の廃棄処理、リサイクル技術の未確立
かつて、化学工業発展の過程では、工場から出る排気ガス、排水、廃棄物の処理設備が不充分なままに数多くの工業団地が作られ、日本は世界有数の公害国となった経験を有している。日本中の空が汚染され、光化学スモッグに悩まされ、四日市、川崎は呼吸器系の疾患で世界にその名を知られた。日本中の河川、海域が汚染され、海水浴場は閉鎖されて、海岸に海水プール付きの施設が作られ、海は見るだけとなった。多くの川には黒い水が流れて、魚も住めない状態にまでなっていた。更に、産業廃棄物の不法投棄は後を絶たず、特に有害化学物質を含む産業廃棄物の不法投棄は大きな社会問題となった。日本人は、長い時間をかけて、排気ガス処理技術、排水処理技術、廃棄物処理技術を開発・導入し、ようやく、大気汚染、水質汚染などの悲惨な被害が収まって来たところである。

政府も産業界も過去の公害問題に何も学ばなかったかのように、原子力発電に関しては、再び、電気を作ることのみで、先に生じる多くの問題を先送りにしたまま、強引に、次々と原子力発電を建設し稼働させた。

使用済み核燃料のリサイクルは国内では行えず、フランスに送り、処理して再度日本に運び再処理核燃料として原発に使用する話ではあるが、問題は多い。何よりも大きな問題は、フランスの再処理工場で放射性物質を環境に放出しているに違いないと考えられる点、もし事故が起これば、更に重要な環境汚染が起こるであろうと予想される点である。フランスでやっていることだから知らないですまされる問題ではなく、日本がフランスに依頼して処理をしている以上、日本はここからの環境汚染に無責任ではいられない。

国内では、青森県の六ヶ所村に再処理工場があるが、莫大な資金(2兆円を超える)を投じて推進して来たが、本格稼働には至っていない。これは、幸運なことであり、日本政府は、福島の原発事故以前の強引な姿勢で推進して来た再処理工場計画について、六ヶ所村が稼働した際の放射性物質による環境汚染、安全性について、再度公開するとともに、安全基準について見直すべきである。

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