6xHisのタグを持つ蛋白質を精製する場合について述べる。
かつて、20年も前に、私が大腸菌での発現などをはじめた頃は、まだ、PCRのプライマーに用いるoligo-nucleotideの合成がかなり高価であり、経費節約の為に4xHisと短くして発現精製したこともあった。
しかし、
4xHisの場合、低い条件で溶出されるため、十分に精製の純度を上げることに問題があり、現在は、oligo-nucleotideの値段も易くなっているので、総て6xHisとして発現精製している。
Hisタグを付けた発現蛋白質の精製は、目的によるが、結晶化のように高い純度を目指すのであれば、Ni-affinity, DEAE-Sepharose, CM-Sepharoseのように3種の異なる性質のカラムを用いて、3段階で精製するのが良い。
まず、Hisタグを持つ蛋白質の精製の為のaffinity樹脂としての選択肢は、最近では数が多い。
金属としては、NiまたはCoを選んで問題はない。Ni-affinityはブルー、Co-affinityはピンク色をしている。P450のようなヘム鉄を含む蛋白質(赤い色の蛋白質)を精製する場合には、ブルーのカラムの方が吸着の様子がよく見えるので、私は、特に理由がない限り、Ni-affinityを使用している。
担体としては、各自の対象とする蛋白質により選択する必要があるが、細菌の可溶性の蛋白質を大腸菌で発現精製するような場合には、担体としての扱い易さだけで考えても問題は起きない。私が主に扱ってきた動物のステロイド合成系のP450は、疎水性の強い膜蛋白質であり、カラム上で凝集して回収できなくなる場合もあり、カラム上での凝集を避ける為に、相対的に体積当たりの吸着量の少ないNi-NTA agarose (Qiagen)を用いてきた。(agaroseの担体は、相対的に強度が弱いが、それを知って丁寧に扱えば問題とはならない。)
カラムサイズ:
affinity
では、Hisタグを持つ蛋白質のみが特異的に吸着する為に、大部分の大腸菌の蛋白質は樹脂に吸着せずカラムを素通りするので、大腸菌の蛋白質がカラムに吸着してカラムの吸着容量が奪われることを考える必要が無い。従って、樹脂の吸着容量から計算して、Hisタグを持つ蛋白質の量(発現レベルから計算)の2倍程度が吸着できる樹脂の体積を使用する。
吸着と溶出の条件がはっきりしているので、使用するカラムは、扱い易い範囲で、太く短い方が良い。
次回に、Ni-NTA
agaroseカラムでのウシCYP21-6xHisの精製を具体的に述べる。
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