研究者の非正規雇用は拡大の一途をたどっている。
この大きな原因の一つは、特任教員という非正規雇用の教員の地位を作り上げたことにある。ポスドクを大量に増やし、次にはその受け皿としての助教のポジションの数が足りなくなり、しかし、公務員の定員削減の考えは維持する必要がある為に、そのまま、特任助教という非正規雇用の地位を作った。
つまり、教授となって、給与を支払えるだけの研究費さえ獲得すれば、ポスドク、特任助教を何人でも雇用できる制度である。これがエスカレートして、特任助教だけではなく、特任講師、特任准教授など、研究費を獲得しさえすれば、非正規雇用であれば、何人でも雇って研究をすることができる。
この制度の非常に大きな問題は、 一度人件費を十分に払える研究費を獲得すれば、人員を増やし、見かけの研究成果をあげることは容易であり、同じ研究者が研究費を獲得し続けることができることとなり、研究費の大きな偏りが増幅される一方となることにある。つまり、東大や京大に一極集中する傾向を助長する。さらに、東大や京大の抱える非正規雇用の研究者数も増加の一途をたどる結果となる。
正規のポジションの数が増える訳でもないので、非正規雇用の研究者は、見かけだけはポスドクから特任助教、特任講師と地位が上がっているように見えるが、いつまでも非正規雇用であることには変わりが無く、負の連鎖から抜けようが無くなってしまう。その結果、大型の研究費の獲得が継続できなくなった時点で、次の職探しに奔走する研究者が続出する。実際には、最初から研究者はみな正規雇用の職員を希望しているので、ポスドクとなった時点で、正規雇用の職探しに奔走することとなる。また、正規の職に就く為には、研究業績の見かけを良くすることが必要である為、本来の目的である研究に専念するのではなく、一つでも多くの論文の共著者となるべく、あるいは、少しでも見かけの良いジャーナルの論文の共著者となるべく、あるいは、教授のご機嫌取りの政治的な思考に明け暮れることとなる。
米国のNIHではジャーナルのインパクトファクターは研究者の能力を評価するには不適当であり、論文の価値を測るものでもないという勧告を出している。しかし、日本では、明らかにインパクトファクターを持って研究者の能力であったり、論文の価値を測ることを続けている。NatureやScienceのようなインパクトファクターの高いジャーナルに掲載された論文の共著者として名前が載れば、本人は何もしておらず、論文を読んでさえもいなくとも、就職の助けとしては非常に大きな効果を発揮するのが現実である。これは、米国でも勧告を出さないといけない程に、インパクトファクター進行が進んでいるのが現状である。
このような傾向がエスカレートすれば、研究結果のでっち上げにより、論文を多く出す、あるいは有名なジャーナルに掲載されることを目指す研究者が生まれることとなる。残念なことに、このような研究者もどきでも、地位を得てしまえば自分で実験をすることはなくなり、ついに表沙汰とならないままとなる。
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