前回示したプロトコールに従って、蛋白質を精製する際の注意点について説明する。
1)カラムの選択
不満はあるが、私は、Bio-RadのEcono-Column Chromatography
Columns (2.5 x 10 cm)を多用している。従って、以下の記述は総て内径2.5 cmのカラムを使用した際の話である。これに、Ni-NTA agaroseが約4 cm程度の見やすい高さとなるように詰めて、自然落下で使用する。
カラムの先端に短いシリコンゴムを付け、その先に1滴の大きさが同じになるようにyellow tipの上部の太いところを切り除きシリコンチューブに入るようにしたものを取り付ける。流速は、ねじ式のストッパーをシリコンゴムのところに付け、ねじの絞りで調整する。(プラスティックのものが軽くて扱い易い)
2)流速
affinityカラムであるので、吸着、洗浄はかなり早め(5−6秒に1滴)で良いが、溶出はゆっくりと(12秒に1滴)出して、少ない体積で、濃い蛋白質溶液を得るようにする。
内径2.5 cmのカラムを使ってこの程度であり、これより細いカラムを使うと流量の調節が難しくなり、時間ばかり掛かる割にきれいに精製できないことになる。
例えば、内径1 cmのカラムを使えば、カラムの断面積は5分の1以下になる為に、同じ流速で出そうとすれば、1分に1滴落ちるような流速で溶出する必要がある。
図はP450c21の洗浄の様子を示したものである。カラムの上部に赤いバンドがあり、その下に薄く黒いバンドがゆっくりと下がっているところである。何も吸着していない状態ではNi-agaroseは青いので、P450が上部の濃いところだけではなく、薄くカラム全体に吸着していることが見て取れる。十分に洗浄ができた時点で、溶出を始めると、ゆっくりと上部の赤いバンドが濃縮されながら下がって行く。P450は赤い色がついているので、流速が速ければバンドが乱れたり、十分溶出されなくなるのが肉眼で容易に観察できる。
Bio-Radのカラムは、下部が黄色のカバーで覆われている為に、フィルターのすぐ上の部分が見えないことが不満である。実は、色の無い蛋白質の精製でも、溶出時はバンドの部分の蛋白質が濃くなり屈折率が変化する為に、溶出の様子が分かることが多い。従って、フィルターのすぐ上の部分を見えなくしてしまっているのは残念である。
3)ペリスターポンプを使わない理由
ポンプを使うとカラムもオープンでは扱えず、大腸菌からの抽出液を通す際にもポンプを使わざるを得ない。通常はカラムのin側にポンプをおくことになるが、樹脂が加圧状態となり易く、特にP450のような膜蛋白質では、凝集の原因となる。また、ポンプを使うと全体に装置が煩雑となり、トラブルの原因が増える傾向がある。同じP450でも、バクテリアのP450のような可溶性蛋白質の場合には、あまり凝集の心配をする必要はなく、agaroseを担体として選択する意味も無い。しかし、逆にポンプを使用する理由も特にない。
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