1. 組織からの核抽出画分の調整
ここでは、組織から少量の核抽出画分を調整する方法を述べる。尚、以下の操作は基本的に総て氷上で行う。
基本的な考え方は、ある程度組織をばらしてPBSで組織を洗った後、余計な部分を除いてほぼ細胞レベルに近い程度まで分散して、イオン強度を下げた低張液で浸透圧と機械的な分散により細胞膜を破る。これにより細胞質の成分を低張液中に溶出させて出来るだけ除き、次にイオン強度の高いバッファーでionicに結合している核抽出物を溶出させて回収する。
当然、細胞壁を持つ酵母、植物系の細胞や組織に対しては、予め細胞壁を処理しておく必要がある。
基本的な考え方は、ある程度組織をばらしてPBSで組織を洗った後、余計な部分を除いてほぼ細胞レベルに近い程度まで分散して、イオン強度を下げた低張液で浸透圧と機械的な分散により細胞膜を破る。これにより細胞質の成分を低張液中に溶出させて出来るだけ除き、次にイオン強度の高いバッファーでionicに結合している核抽出物を溶出させて回収する。
当然、細胞壁を持つ酵母、植物系の細胞や組織に対しては、予め細胞壁を処理しておく必要がある。
機器:ハサミ、Dounce Glass Tissue Homoginizer (Wheaton) 容量40 ml、Stainless Spatula(小)、高速冷却遠心機(卓上でも良いが固定ローターの方が操作が容易)、卓上超遠心機
Buffer:
buffer A: 10
mM HEPES (7.9) buffer C: 20
mM HEPES (7.9)
1.5
mM MgCl 1.5 mM MgCl
0.5
mM DTT 0.5 mM DTT
0.5
mM EDTA 0.5
mM EDTA
1.0
mM PMSF 420 mM NaCl
20
% glycerol
1.0
mM PMSF,
aprotinin, leupeptin, pepstatin
1.
1-2 cm角程度の体積の組織をハサミで小さく刻みながら適量のPBSを入れたガラスホモジナイザー 内に落とす。
2.
粗くホモジナイズする。組織を押しつぶしながら、邪魔になる筋などはspatulaで取り除く。
3.
遠心tubeに移して軽くスピンダウンする。
4.
目分量でペレットの5 volのbuffer Aで分散しながら、ガラスホモジナイザーに移し、ガラスの心棒を回しながら10-15 回上下して全体がほぼ均一に分散した状態とする。
5.
遠心tubeに移し、spin down (6000 rpm x 2 min)。
6.
上澄みを除き、2-3 volのbuffer Aでペレットを分散し、ガラスホモジナイザーに移して、ガラスの心棒を回しながら10-15 回上下して全体をほぼ均一に分散。
7.
遠心tubeに移し、spin down (6000 rpm x 2 min)した後、上澄みをできるだけ丁寧に除く。(disposableのガラスピペットを用いてアスピレーションで余分な上澄みを除く。この際、angle rotor を使用した方がペレットが斜めになり上澄みを除きやすい。)
8.
1 volのbuffer C(1-2 ml程度になる)を加えてペレットを分散しガラスホモジナイザーに移し、ガラスの心棒を回しながら数回上下する。
9.
懸濁液を超遠心tubeに移し、超遠心(65000 rpm x 10 min)。(もし、卓上超遠心が使用できる環境に無い場合は、床置の高速遠心機で10000 rpm x 10 minでも良い。)
10.
上澄み(clearな部分のみ)を1.5 mlの保存用tubeに移し、一部は蛋白定量に回す(蛋白濃度はおよそ2−5mg/mlであれば良い)。Tubeは液体窒素で凍らせ、-70℃で保存する。
注)
A)
最終的な核抽出画分のタンパク質濃度は1 mg/ml以上であることが望ましい。これ以下の濃度になると容易に懸濁物が生じて核酸への結合能が失われることがある。
B)
多くのプロトコールでは、buffer Cでの抽出液を透析して塩濃度を下げるステップが含まれているが、透析をするとタンパク質が凝集して懸濁物が生じやすく、必要な成分(核タンパク質)が失われる。従って、透析はすべきではなく、又、そのままで続くGel Retardation Assay (gel shift assay) に重要な影響を与えることは無い。