子宮頸癌の90%以上が、ヒトのパピローマウイルス(HPV)の感染により起こると考えられており、日本では2009年から、子宮頸癌の予防の為にHPVワクチンの接種が始まった。
子宮頸癌は出産適齢期の比較的若い女性に多く、子宮頸癌の摘出手術により、以後妊娠のできない体となる可能性がある。従って、HPVワクチンの集団接種により、HPV感染を予防すれば子宮頸癌も激減し、子宮摘出による不妊の悲劇を無くすことができる。これが、HPVワクチンの接種を推し進めてきた理由であろう。
ワクチンには、メルク社のガーダシル(Gardasil)とグラクソ・スミスクライン社のサーバリックス(Cervarix)がある。米国のFDAとCDCでは、ワクチン投与により問題が生じると考えられる他の疾患、投薬などが有った患者を除けば、ワクチンにより引き起こされたと判断できる重篤な副作用は明確には認められていないとしている。
しかし、海外で広く使われており、安全性も確認されているから問題ないとの主張は、危険である。人種が異なれば、様々な遺伝的な違いがあり、日本人での副作用のデーターを考えるべきである。
日本で起こっている副作用による被害は、ガーダシルによるものか、サーバリックスによるものか、製品のロット番号は特定のものか、ロット番号によらないのか。
2012年の報告によると、
サーバリックス:延べ634万回中869件の副作用の報告(内重篤75件)
ガーダシル:延べ53万回中69件の副作用報告(内重篤7件)
そして、2009年12月の販売開始から継続して副作用の報告があることからすると、メーカー、製品のロットなどの問題ではなく、現在のHPVワクチンの本質的な問題と考えられる。
両者を合わせた重篤な副作用の発生頻度は、82件÷6870000回×100000回=1.2件となる。つまり、10万回の接種当たり、約1.2人が重篤な副作用に苦しむ。1人3回の接種が必要なので、10万人が接種を受けたとすると、3.6人が重篤な副作用を発症することになる。
ワクチンにより、70%以上のHPV感染は防げるようである。従って、計算上は、70%程度の子宮頸癌を予防できることになる。しかし、使用開始後の年数からすると、ワクチン接種による直接的な子宮頸癌の減少数のデータはまだ無いと考えられる。
また、HPVの感染は、一過性であり、感染しても一生涯有効な免疫は形成されず何度も感染する。では、ワクチン接種による抗体は、どの程度の期間有効であるのか。ワクチンが米国のFDAで承認されたのが2006年なので、ワクチン接種後の抗体の有効期間についても、長期の大規模データは無い。
定期的な子宮癌検診(子宮頸部細胞診)により、扁平上皮癌(子宮頸癌の約75%)は早期発見が可能であり、前がん状態で発見できれば、異常な細胞を除くことで、子宮頸癌となるのを防ぐことができる。少なくとも、定期検診により、前癌状態または早期の子宮頸癌として発見できれば、術後の妊娠、出産も可能である。
国立がん研究センターの統計情報(http://ganjoho.jp/public/statistics/pub/statistics01.html)によると、2011年の女性のがんによる死亡数が多い部位は、多い順に、
大腸>肺>胃>膵臓>乳房
部位別の死亡数(2011年)では、女性全体で、約14万人ががんで亡くなっている。内、乳癌は約1万3000人、子宮頸癌は2700人。
部位別の死亡率では、1年間(2011年)に人口10万人当たり、がんで亡くなる女性は222.7人、内乳癌は19.7人、子宮頸癌は4.2人。
また、羅漢率(2008年)が多い部位は順に、
乳房>大腸>胃>肺>子宮(全子宮癌を含む)
2008年に新たにがんと診断された全国推計値は、女性では約31万人、その内、乳癌は約6万人、子宮頸癌は約1万人。
部位別の羅漢率(2008年全国推計)では、1年間に、女性人口10万人当たり468人が新たにがんと診断され、内、乳癌は91人、子宮頸癌は15人。
この数字からすると、HPVワクチンの接種により、うまく行けば全国で年間7000人が子宮頸癌にかかることを予防でき、約2000人が子宮頸癌で死ぬことを防ぐことができる。
これに対し、ワクチン接種による重篤な副作用と考えられるものが、2012年に、82件、発生頻度は上で計算したように、ワクチン接種10万回当たり1.2人。10万人が3回接種を受けた場合、約3.6人が重篤な副作用を発症する。
女性人口10万人当たり、15人が子宮頸癌になることを防ぐ為に、大規模なワクチン接種をして、3.6人が重篤な副作用に苦しむのであるとすれば、これは、本末転倒である。
それ以上に、現在健康な、生涯子宮頸癌にならないかもしれない少女にワクチンを打ち、重篤な副作用によりその人生を破壊してしまうとすれば、厚生省がこれを停止しない理由は無い。まして、ワクチンにより約7割の子宮頸癌が防げるとしても、定期検診により7割以上の前癌状態及び子宮頸癌が発見でき、早期治療が可能であり、早期に発見すれば術後の妊娠出産も可能であることを考えれば、ワクチンによるリスクはそれを受ける利益に見合わない。
少なくとも、家族にこのワクチン接種を受けさせようとは思わない。