2013年6月21日金曜日

子宮頸癌の予防ワクチンは接種中止とすべき根拠


 子宮頸癌の90%以上が、ヒトのパピローマウイルス(HPV)の感染により起こると考えられており、日本では2009年から、子宮頸癌の予防の為にHPVワクチンの接種が始まった。

 子宮頸癌は出産適齢期の比較的若い女性に多く、子宮頸癌の摘出手術により、以後妊娠のできない体となる可能性がある。従って、HPVワクチンの集団接種により、HPV感染を予防すれば子宮頸癌も激減し、子宮摘出による不妊の悲劇を無くすことができる。これが、HPVワクチンの接種を推し進めてきた理由であろう。

 ワクチンには、メルク社のガーダシル(Gardasil)とグラクソ・スミスクライン社のサーバリックス(Cervarix)がある。米国のFDACDCでは、ワクチン投与により問題が生じると考えられる他の疾患、投薬などが有った患者を除けば、ワクチンにより引き起こされたと判断できる重篤な副作用は明確には認められていないとしている。

 しかし、海外で広く使われており、安全性も確認されているから問題ないとの主張は、危険である。人種が異なれば、様々な遺伝的な違いがあり、日本人での副作用のデーターを考えるべきである。

 日本で起こっている副作用による被害は、ガーダシルによるものか、サーバリックスによるものか、製品のロット番号は特定のものか、ロット番号によらないのか。
2012年の報告によると、
サーバリックス:延べ634万回中869件の副作用の報告(内重篤75件)
ガーダシル:延べ53万回中69件の副作用報告(内重篤7件)
そして、200912月の販売開始から継続して副作用の報告があることからすると、メーカー、製品のロットなどの問題ではなく、現在のHPVワクチンの本質的な問題と考えられる。
両者を合わせた重篤な副作用の発生頻度は、82件÷6870000回×100000回=1.2件となる。つまり、10万回の接種当たり、約1.2人が重篤な副作用に苦しむ。13回の接種が必要なので、10万人が接種を受けたとすると、3.6人が重篤な副作用を発症することになる。

ワクチンにより、70%以上のHPV感染は防げるようである。従って、計算上は、70%程度の子宮頸癌を予防できることになる。しかし、使用開始後の年数からすると、ワクチン接種による直接的な子宮頸癌の減少数のデータはまだ無いと考えられる。

また、HPVの感染は、一過性であり、感染しても一生涯有効な免疫は形成されず何度も感染する。では、ワクチン接種による抗体は、どの程度の期間有効であるのか。ワクチンが米国のFDAで承認されたのが2006年なので、ワクチン接種後の抗体の有効期間についても、長期の大規模データは無い。

定期的な子宮癌検診(子宮頸部細胞診)により、扁平上皮癌(子宮頸癌の約75%)は早期発見が可能であり、前がん状態で発見できれば、異常な細胞を除くことで、子宮頸癌となるのを防ぐことができる。少なくとも、定期検診により、前癌状態または早期の子宮頸癌として発見できれば、術後の妊娠、出産も可能である。

国立がん研究センターの統計情報(http://ganjoho.jp/public/statistics/pub/statistics01.html)によると、2011年の女性のがんによる死亡数が多い部位は、多い順に、
大腸>肺>胃>膵臓>乳房
部位別の死亡数(2011年)では、女性全体で、約14万人ががんで亡くなっている。内、乳癌は約13000人、子宮頸癌は2700人。
部位別の死亡率では、1年間(2011年)に人口10万人当たり、がんで亡くなる女性は222.7人、内乳癌は19.7人、子宮頸癌は4.2人。

また、羅漢率(2008年)が多い部位は順に、
乳房>大腸>胃>肺>子宮(全子宮癌を含む)
2008年に新たにがんと診断された全国推計値は、女性では約31万人、その内、乳癌は約6万人、子宮頸癌は約1万人。
部位別の羅漢率(2008年全国推計)では、1年間に、女性人口10万人当たり468人が新たにがんと診断され、内、乳癌は91人、子宮頸癌は15人。

この数字からすると、HPVワクチンの接種により、うまく行けば全国で年間7000人が子宮頸癌にかかることを予防でき、約2000人が子宮頸癌で死ぬことを防ぐことができる。

 これに対し、ワクチン接種による重篤な副作用と考えられるものが、2012年に82件、発生頻度は上で計算したように、ワクチン接種10万回当たり1.2人。10万人が3回接種を受けた場合、約3.6人が重篤な副作用を発症する。

 女性人口10万人当たり、15人が子宮頸癌になることを防ぐ為に、大規模なワクチン接種をして、3.6人が重篤な副作用に苦しむのであるとすれば、これは、本末転倒である。

 それ以上に、現在健康な、生涯子宮頸癌にならないかもしれない少女にワクチンを打ち、重篤な副作用によりその人生を破壊してしまうとすれば、厚生省がこれを停止しない理由は無い。まして、ワクチンにより約7割の子宮頸癌が防げるとしても、定期検診により7割以上の前癌状態及び子宮頸癌が発見でき、早期治療が可能であり、早期に発見すれば術後の妊娠出産も可能であることを考えれば、ワクチンによるリスクはそれを受ける利益に見合わない。

 少なくとも、家族にこのワクチン接種を受けさせようとは思わない。

2013年6月14日金曜日

大腸菌で発現したタンパク質の精製6:DEAE Sepharose 使用の具体例

大腸菌で発現したP450c21Ni-NTA agaroseで精製後、DEAE Sepharoseを素通りさせ、それを更にSP Sepharoseで精製する。ここでは、DEAE Sepharoseを素通りさせる過程を具体的に示す。
必要なバッファー:
Buffer E:
20% Glycerol
0.1 mM DTT
0.1 mM EDTA
1.5% NaCholate
1% Tween 20
0.1 mM PMSF

Buffer F:
 20 mM KPi (7.4)
20% Glycerol
0.1 mM DTT
0.1 mM EDTA
1.0% NaCholate
0.1% Tween 20
0.1 mM PMSF

Buffer G:
50 mM KPi (7.4)
20% Glycerol
0.1 mM DTT
0.1 mM EDTA
1% NaCholate
0.5%    Tween 20
0.1 mM PMSF
20 mM imidazole

Buffer H:
60 mM Imidazole-AcO (7.4)
20% Glycerol
0.1 mM DTT
0.1 mM EDTA
1% NaCholate
0.5%    Tween 20
0.1 mM PMSF


樹脂はDEAE Sepharose (Fast flow)を内径2.7 cmのカラムに5-6 cmの高さとなるように、buffer Fで平衡化して詰める。

1)Ni columnからの溶出画分を、同じvolumebuffer Eで希釈する。(この段階では、イミダゾールがヘム鉄に配位しているので、うかつに透析でイミダゾールを除くと総て沈殿して発現からやり直すことになる)
2)希釈したP450を含む溶液を樹脂を乱さないようにカラムに加える。この時の流速は5-6秒に1滴とする。総ての溶液を加えて樹脂を素通りさせる。
3)ほぼ総ての溶液が樹脂に吸収され、上部に樹脂の上部に1-2 mmとなった時点で、buffer G2-3 mlそっと加え、これが樹脂に吸収するのを待ち、もう一度、2-3 mlbuffer Gを加えてこれが樹脂に吸収されるのを待ち、10-20 mlbuffer Gで押し出した後、40 mlbuffer Hで残りを出し切る。
4)適当なフラクションをピックアップして、CO-スペルトルを測定し、回収する画分を決める。
5)回収したフラクションは、一部電気泳動用に分けておき、総てを液体窒素で凍らせて、-80度で保存する。

注)コール酸はDEAE Sepharoseに吸着する。このために、一部P450は軽くカラムに吸着するが、buffer Hで溶出される。

2013年6月1日土曜日

大腸菌で発現したタンパク質の精製5:樹脂の選択


Ni-NTA agaroseから溶出されたP450は、約90%以上の純度となると考えられる。これをSDS-PAGEでオーバーロード気味にしても単一バンドとなる程度まで精製する為には、DEAE-SepharoseSP-Sepharoseなど更に精製を進める必要がある。まず、P450の精製を例に具体例を挙げながら説明を進める。

1)DEAE-Sepharoseの利用(陰イオン交換樹脂)
大部分の動物のP450は、低めのイオン強度でも一定条件でDEAE-Sepharoseを素通りする。従って、Ni-NTA agaroseからの溶出画分を、低めのイオン強度でDEAE-Sepharoseに素通りさせることにより、大部分の不純物はDEAE-Sepharoseに吸着して除くことができる。基本的に素通りさせることを考えているので、太く短いカラムで十分であり、操作が楽で、時間も短縮できる。

動物のP450は、疎水性の高い膜蛋白質であり、detergent存在下でも凝集し易いことが精製の際の問題となる。その為に、Q-Sepharoseのような強いイオン交換樹脂は用いない。一方で、細菌のP450など可溶性の蛋白質の場合には、Q-Sepharoseの方が効率が良い場合が多い。しかし、細菌のP450のような可溶性蛋白質を精製する場合でも、必ずコール酸/Tween 20を用いておく方が安全である。

可溶性蛋白質の精製でも必ずコール酸/Tween 20を加えて精製することにより、蛋白質の凝集、カラムの樹脂への吸着を防ぐことができ、精製のトラブルを減らし、回収率を上げることができる。必要ならばdetergentは後で抜くか、置き換えるかすれば良く、精製中にリスクを冒す必要はない。

2)CM-SepharoseまたはSP-Sepharoseの利用(陽イオン交換樹脂)
大部分の動物のP450は、CM-またはSP-Sepharoseに吸着する。これを、3番目のカラムとして用いることにより、P450を高度に精製することができる。これを3番目のカラムとして用いることの理由は、この段階では、精製サンプルは既にほとんど不純物は除かれており、吸着容量としては、P450のタンパク量で必要なカラムの体積(bed volume)を計算できる為、大きなカラムの体積は不要であり、これもまた、太く短めのカラムで、十分に不純物との分離を得ることが可能である。

精製には常にdetergentを用いることは、陰イオン交換樹脂、陽イオン交換樹脂ともに共通している。もし、SP-Sepharoseを用いて蛋白質が凝集するようであれば、CM-Sepharoseに切り替えるべきである。

3)hydroxyapatite
アロマテース(P450arom)の3番目のカラムとしては、hydroxyapatiteが有効である。多くのP450の精製に使えるが、通常、大腸菌で発現したP450は、N-末端の疎水的な膜に挿入される部分(membrane anchor)を削除しているので、hydroxyapatiteをあえて使用する必要はない。アロマテースの場合には、N-末端を削除してもなお疎水性が高く、カラム上で容易に凝集する為に、hydroxyapatiteのような、比較的吸着能の低いカラムを使用することで、凝集を防ぎ、精製することが可能である。

4)ゲル濾過
P450のゲル濾過は、Sephadex G200などで行うことができる。しかし、これを精製に用いるという考えは妥当ではない。特に、疎水性蛋白質では、ゲル濾過にもdetergentの存在が必要であり、しかもカラム長は長くせざるを得ない。その結果、ゲル濾過での樹脂への蛋白質の吸着が多く、回収率が極端に低下する。また、ゲル濾過を行うには蛋白質を濃縮する必要があり、一方で、溶出してくる蛋白質画分は希釈されてしまう。手間と、時間と、蛋白質のロスを考えれば、ゲル濾過は精製に使用すべきではない。

5)透析
イオン強度を調節する為に、透析により脱塩をすることは常套手段であるが、透析は、手間と時間がかかる一方で、蛋白質の凝集のリスクが大きい為に、私は、通常これを避け、低イオン強度のbufferで希釈する方法をとっている。