P450の発現の為のN−末端をどのようにして決めれば良いのか。前回アンカー部分を除くとしたが、ここではhuman Aromatase (CYP19、アロマテース)を例にとり、もう少し具体的に説明を加える。
左図は、ヒトCYP17, CYP21, CYP19という3種のミクロゾーム型P450のアミノ酸配列のアラインを示したものである。P450の場合は、大きなスーパーファミリーを形成しているので配列のアラインにより、膜アンカー、ベーシック、プロリンリッチ部位を決めることは容易である。実際には、20以上のP450をアラインすることにより、基本的な構造を決める。
その結果、アロマテースは左上部の図のように、アミノ酸40残基の相対的に長い膜アンカー部位を持ち、その下流にベーシック部位、プロリンリッチ部位を持つことが分かる。
膜タンパクを大腸菌で発現する基本的な考え方としては、まず発現の目的から、アンカー部位を残すか否かの判断をすることから始める必要がある。アロマテースの発現の目的は、ともかく大量の精製タンパク質を得て可能な解析を行うことであった。また、膜アンカーを除いても酵素活性には影響が無いことは知られていた。従って、発現に有利であることを優先して、アンカー部位を除いて発現する道を選択した。
次の選択は、ベーシック部位から発現させるとして、既に、良く発現できそうな N-末端配列が知られており、直接の例はなかったが、左下図に示すように、アラインによる位置決めをしてCYP2C11のベーシック部位の上流にMetAlaを付けた配列を使って、アロマテースを発現することとした。
後に、CYP21を発現した際には、CYP2C3のベーシック部位を利用した。これらの経験からすると、高いレベルの発現を得ることができる他の類似の酵素のN−末端をアラインにより位置決めをして用いることが、高発現の秘訣であると考えられる。
その他の発表されているP450の発現およびこれまでの経験からすると、N−末端の8-10残基のアミノ酸配列は、疎水性のペップチドよりも親水性ペプチド、恐らく幾つかのArgかLysを含むペプチドの方が、高い発現レベルを得る為には有利であると考えられる。
更にこの部分のRNAの核酸配列は、緩いRNAの2次構造を取ることができるAT-richな配列が有利であると結論づけられる。
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