高発現を得る為のN-末端の配列としては、N-末端のアミノ酸10個分程度の範囲で、1)核酸配列として、mRNAの5'末が固い2次構造を取らないようにAT-richにかえておく、2)セカンドコドンにGCT (Ala)を採用する、3)膜アンカーを取り除く、4)アラインメントにより位置を置換すべき位置を決めて、高発現を得ている同種蛋白質のN-末のアミノ酸配列で置き換える、という4つの点に注意を払えば良いことがわかった。
この内のセカンドコドンについては、私は十分な検討はしておらず、GCTを使えばうまく発現できてきたというに過ぎない。一般に、大腸菌での蛋白質の発現は、発現・精製をして、その蛋白質を用いて種々の解析を行うのが目的であり、発現は研究をすすめるに必要な最初のステップである為に、うまく発現できれば先へ進めることが優先され、大腸菌での発現の更なる理解の為に時間を使うことはない。結果的に、十分な理解がなされないままに、唯一つの方法として用いられ、未だよくわからない点は多々あり、正しくはないことが信じられているケースも多くある。
ともあれ、現時点での理解の範囲で、解説を続ける。
この内のセカンドコドンについては、私は十分な検討はしておらず、GCTを使えばうまく発現できてきたというに過ぎない。一般に、大腸菌での蛋白質の発現は、発現・精製をして、その蛋白質を用いて種々の解析を行うのが目的であり、発現は研究をすすめるに必要な最初のステップである為に、うまく発現できれば先へ進めることが優先され、大腸菌での発現の更なる理解の為に時間を使うことはない。結果的に、十分な理解がなされないままに、唯一つの方法として用いられ、未だよくわからない点は多々あり、正しくはないことが信じられているケースも多くある。
ともあれ、現時点での理解の範囲で、解説を続ける。
N-末端の次は、C−末端について議論を試みる。特に避ける理由がない限り、C-末端には6xHis(6個の連続したヒスチジンのタグ)を付ける。これは発現した後、Ni(Ni-NTA Agarose, Qiagene等)またはCo (TALON® (Cobalt), TakaraBio等)を利用したアフィニティーカラムにより精製を容易にする為である。標的蛋白質により、単に6xHisを付けるだけで発現レベルが高くなることがある。この現象の実にそれらしく受け入れ易い説明として、一般的にはHisタグが保護的に働くのだと考えられている。しかし、個人的には、恐らく、末端のアミノ酸配列を親水性とする為に、蛋白質の水溶液中での安定性が増す為ではないかと考えている。これは、hydropacy
profileを取って比較してみると分かり易い。図に示すように、ヒトP450sccおよびウシP450c21のC-末端のhydropacy
profileで比較してみると、His-tagを付けることによりC-末端部分の親水性が増すことが分かる。
Fig 1はヒトP450sccのHis Tagの有無によるHydropacy Profileを比較したものである。上図は本来のC-末端、下図が6 x His Tagを加えたものである。C-末端部の親水性(Hydrophilicity)が2.59から2.99に上がったことが分かる。 Fig 2は大腸菌での発現の為にN-末端をラットCYP2C3に置き換えたものと、そのC-末端に6 x Hisを加えたものを比較している。この場合には、P450sccに比べC-末端の親水性がより大きく変化していることが分かる。 この二つのP450について、His Tagの有無による発現レベルを比較したデータは取っておらず、His Tagを付けたものの発現しか見ていないが、両者ともに1 μmol/L cultureを超える発現量を得ることができる。
Fig 1はヒトP450sccのHis Tagの有無によるHydropacy Profileを比較したものである。上図は本来のC-末端、下図が6 x His Tagを加えたものである。C-末端部の親水性(Hydrophilicity)が2.59から2.99に上がったことが分かる。 Fig 2は大腸菌での発現の為にN-末端をラットCYP2C3に置き換えたものと、そのC-末端に6 x Hisを加えたものを比較している。この場合には、P450sccに比べC-末端の親水性がより大きく変化していることが分かる。 この二つのP450について、His Tagの有無による発現レベルを比較したデータは取っておらず、His Tagを付けたものの発現しか見ていないが、両者ともに1 μmol/L cultureを超える発現量を得ることができる。
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