政府は、都営地下鉄・路線バスの24時間運行を検討しているという。都市への重点的な規制緩和により日本全体の競争力を上げる意図らしい。政府はどのような社会の構築を目指しているのか。24時間運行している地下鉄をもって、世界で最もビジネスに便利な都市であると誇るような日本を、私は望まないが。
ドイツでは、州により異なるが多くの州で条例により、日曜日は飲食店以外の小売店を閉店としている。スーパー、デパートなども休みである。それで、特に困ったことがあろうとも思えない。晴れた日曜日には、店が開いていないにもかかわらず多くの家族連れがウィンドウショッピングで商店街を楽しそうにそぞろ歩き、子どもは長いソーセージが両側にはみ出したパンを買ってもらい嬉しそうにしている。川沿いの公園では、町中の人が出て来たかと思う程に、幼い子どもを連れた家族がピクニックをしてくつろぎ、あるいは家族で川沿いのサイクリング道を走っている。朝早くに店を開くこともなく、夜遅くまで店を開いていることもない。
日本では、土・日曜日は稼ぎ時とばかりに小売店は力を入れる。最近では正月も元旦から店を開く小売店が増えている。コンビニエンスストアの場合には年中無休24時間営業が当たり前である。これは、本当に便利なのだろうか。これに加えて、地下鉄・路線バスの24時間営業を検討していると聞くと、政府はどのような社会を目指しているのかという疑念を抱く。国会議員の先生方は、自分たちが夜中の2時、3時に電車に乗るような仕事をしたいと希望しているのだろうか。
アメリカで、24時間営業のスーパーに夜の12時を過ぎて行ったことがある。当然従業員の数は少なく、客もほとんど居ない。生鮮食品の棚は既にほとんど片付けられており、売り場が広いだけに不気味である。パーキングにも車はほとんど停まっておらず、何時強盗が出てもおかしくない。
ドイツの選択は、休みの日には多くの家族が一緒に過ごすことのできる緩やかで穏やかな社会ではなかろうか。日本の政府が目指すのは、休みの日にも家族はバラバラで同じ時を過ごすことがほとんどない社会だろうか。どうも殺伐とした社会を作ろうとしているとしか思えない。
コンビニは本当に深夜営業をする価値はあるのだろうか。単に犯罪を増やしているだけではないのか。小売店は、正月まで店を開けて売り上げを上げないと倒産するのか。企業の社会的な役割とは、利益を上げ、それを資本家と従業員に還元することである。これは金銭だけではなく、従業員家族の安定した生活の保障、幸福な暮らしを与えることも含まれるのではないか。真夜中まで走っている電車に乗って仕事をする社会を、そのような暮らしを誰か目指したい人はいるのだろうか。
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