2013年2月2日土曜日

大腸菌でタンパク質を発現する法16:Extraction buffer

標的タンパク質を大腸菌で発現した後、大腸菌から抽出する為には、以下のExtraction bufferを用いて超音波破砕を行う。このExtraction bufferを使用する理由について解説する。

Extraction buffer: 50 mM potassium phosphate, pH 7.4, 500 mM sodium acetate, 0.1 mM EDTA, 0.1 mM DTT, 20 % glycerol, 1.5% sodium cholate, 1.5% Tween 20, and 100 μM PMSF
(PMSFは使用直前に加える。pHはすべての成分を加えた後、最後に、KOHで調整する。)

1) 50 mM potassium phosphate:緩衝能の高いリン酸緩衝液を用いる。中性付近としておけば、広い範囲のタンパク質に使用できる。

2) 500 mM sodium acetate:イオン強度を高めることで、ionic interactionを防ぐ。酢酸塩とすることである程度の緩衝作用も期待している。

3)0.1 mM EDTA, 0.1 mM DTT:いつも必要とは限らないが、気持ちで加えている。

4)20 % glycerol:タンパク質の安定化、および液体窒素で凍結して−80度で保存する為。

5) 1.5% sodium cholate, 1.5% Tween 20:detergentとしてこの組み合わせを用いる理由は、Inclusion body意外はほぼ可溶化でき、後で除きやすい為である。通常よりも高い濃度を使用していることの理由は、少ない抽出液で抽出し、扱う溶液の体積を小さくできることを目的としている。
 detergentはタンパク質を失活・変性させると信じている向きも多いが、私はそのような心配をしたことは無い。cholateと Tween20のようなタイプのdetergentにより、タンパク質が変性することは無く、活性を測定できなくなることがあるとしても、変性の為ではない為に、条件を整えれば、活性を戻すことができるのが普通である。
 可溶性タンパク質の扱いに対して、detergentを使うことを嫌う人は多い。しかし、可溶性タンパク質もかなりの割合で、detergentにより安定化する為、通常、私は、可溶性タンパク質の扱いにもdetergentを用いる。
 detergentとglycerolは、タンパク質の安定化には非常に有効であり、常に使用するべきと考えている。




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