2013年1月30日水曜日

大腸菌でタンパク質を発現する法15:タンパク質の回収2

先に記した手順について解説する。
Extraction buffer:先に示したExtraction bufferには大量のdetergentが入っている。通常、私は、可溶性タンパク質であろうと疎水性の高い膜タンパク質であろうと、このExtraction bufferを用いる。その理由は、回収率が高く、目で見て様子が分かりやすい為である。

膜タンパクでも可溶性タンパクでもdetergentを抜いたbufferでsonicateしてタンパク質を回収することはできる。しかし膜タンパク質は発現レベルが高くなればなるほど、超遠心でペレット側に回収される割合が減少する。従って、わざわざ膜画分を回収する意味は無くなってしまう。
可溶性タンパク質の場合多くの人はdetergentを使わない。しかし、detergentを使う方が凝集などの問題が無くなるので、私は常にdetergentを含むbufferを用いる。
もう一つの利点は、detergentを含むbufferを用いることにより、sonicationをしてクリアーになれば、inclusion bodyがほとんどできていないと判断でき、濁りが多い場合には、inclusion bodyができていると判断できる。つまり、目で見るだけで、発現の状態を知ることができる。

手順:
1. 大腸菌を遠心チューブで低速遠心(4000 rpm × 15 min (tabletop centrifuge Allegra X-15R, Beckman Coulter, Fullerton, CA, USA))して回収する。
2. 大腸菌のペレットを、適量の Lysozyme bufferでサスペンドしながら50 mlのコーニングのチューブに移し(チューブ当り10 ml以下のペレットとなるよう考えて回収する。)、低速遠心し、上澄みを捨てる。
3. 25 ml の Lysozyme buffer with 0.5 mg/ml lysozyme でサスペンドして、低速遠心して上澄みを捨てる。

 2と3のステップは、以下のように簡略化しても良い。
15−16 ml のLysozyme bufferで大腸菌をコーニングのチューブに移す。ここに、等量のLysozyme buffer with 1 mg/ml lysozymeを加えて、適当に混ぜ、低速遠心して、上澄みを捨てる。
氷上で30分inncubate などはしない。操作して、遠心している時間で十分のようである。

4. 25 mlのExtraction bufferを加え、かき混ぜないでそのまま、sonicationを行う。超音波破砕機のプローブの先端で、ペレットが自然に混ざるようにしながら、細胞を破砕可溶化する。この時、温度が上がらないように、20−30秒ごとに手で触ってみて、温度が上がってきたら氷中にしばらく付け、温度が下がってから 再度sonicationを行う。液がクリアーになり、DNAが寸断されて粘度が下がれば終了する。

 多くの場合、アイスバケツに氷を入れ、そこにビーカーを立ててsonicationするように教えられているようであるが、溶液の温度は、発生する熱と放出除去される熱のバランスであり、氷上でsonicationをして、確かめもせずに低温で操作していると信じきっているのは誤りである。
 目と手で確かめるのが最も確実な方法である。
このステップでDNAを寸断して粘度を下げておくことの意味は、次の超遠心での固液分離と更に次の精製時の扱いやすさの確保の為である。
 ここでのExtraction bufferの量は、超遠心のチューブの容量により決定する。無意味に体積を増やして、全体の操作時間を増やすことは極力避けるべきである。

 5. これを超遠心により(Beckman TL100; 95,000 rpm × 10 min at 4◦C)ペレットを除き、上澄みを回収する。
6. 回収した上澄みは、液体窒素で凍らせて、-80度で保存する。

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