2013年1月7日月曜日

大腸菌でタンパク質を発現する法4:生理活性を持つタンパク質の発現

ここでは生理活性を持つタンパク質の発現に焦点を絞って考える。従って、インクルージョンボディーとしてタンパク質を大量に発現することは考えない。

最初に考えておくべきは、発現レベルをどのようにして決定するかである。発現したタンパク質の活性を問題にする場合、発現レベルをSDS-PAGEで見ることにはほとんど意味がない。

His-Tagを付けたものについては、様々なタンパク質に用いることができるのは、発現後、大腸菌の抽出物を0.02 ml程度のNi-NTA 樹脂に吸着させラフな精製を行う方法である。6 x Hisの場合、200 mM imidazoleで溶出できるので、10倍から20倍に薄めた時、活性阻害が起きないならば、このような微量の精製は有効である。
P450の場合、CO差スペクトルで、450nmにピークを示すものは大腸菌には存在しないので、大腸菌からの抽出物をCO差スペクトルで直接測ることができる。これは特異性が高く、酵素活性を持つP450タンパク質の量を正確に測定できる。

インクルージョンボディーができると、相対的にgrowthは遅くなる。また、detergent (界面活性剤)を含む溶液でsonicationにより可溶化した時、白く濁るので容易に判定できる。これを解決するためには、GroES/GroELの発現ベクター(購入可能)を導入して、標的タンパク質と共発現するのが多くの場合有効である。

3 件のコメント:

  1. 大学での研究計画立案に当たって、参考にさせて頂きたいと考えています。
    現在は、目的遺伝子をpColdⅡにクローニングしBL21に導入したところです。これ以降は初めての作業となります。
    初心者ですので素朴な質問かもしれませんが、下記についてご教示をお願い致します。

    1)生理活性測定を目的とした場合、Sonication・遠心分離後の上清(可溶化タンパク)をSDS-PAGEで見ても意味がないのでしょうか。上清中に、適切なフォーミングされたものは少ないと解釈してよいのでしょうか。

    2)適切なフォーミングに発現させる為のファクターは、何を考えておけば良いでしょうか。

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    1. 1) 大腸菌でタンパク質を発現させる場合、1Lの培養スケールから抽出されるタンパク質総量は、約4-5gとなります。これに対し、例えばP450は分子量約50kDaのタンパク質ですが、これが1000nmol発現したとしても、50mgでしかなく、全体の1%です。1000nmolというのはかなりの高発現であり、通常はそこまで発現する事は期待できないので、発現するタンパク質が、20kDa程度までと小さくない限り、SDS-PAGEで見る事はほとんど意味がなく、間違った判断を下す結果になるリスクが大きい者と考えています。
       また、一般に分子量が大きくなる程、発現レベルは低くなる傾向にあると考えて良く、20kDaくらいまでであれば、高いレベルで発現される可能性も高く、SDS-PAGEで見てみる価値はあると思います。
       発現しようとするタンパク質が、膜蛋白質であるか、可溶性のタンパク質であるかによっても発現量は大きく変化します。相対的には、細胞質に存在するような可溶性のタンパク質であれば、発現は容易な傾向にあります。
       もし同じ系で、良く発現するtransformantを持っていれば、発現し易いものと、発現が困難なものとは容易に目で見て分かります。IPTGを加える前の4時間程度のpreincubationで、うまく発現できないものは、大腸菌のgrowthが遅くなります。

      2)foldingを助けるものとしては、GroES/GroELの発現ベクターを共発現するのが最も成功の確率が高くなると思います。タカラバイオで購入可能です。
       およそ50%以上のタンパク質の発現に有効であるという印象を持っています。

      Good luck!

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