2013年1月16日水曜日

大腸菌でタンパク質を発現する法6:培養条件その1

培養条件はあまりに多くの要素があり、これらをどのようにして決めればよいか。

ここでは標準的な方法を示すことにする。

1) 5 ml のTB with 100 μg/ml ampicillin and 40 μg/ml kanamycinを10 ml のculture tubeに入れ、白金耳でfrozen stock から、transformantを植え、37度で一夜培養する。

注1)transformant は常に同じfrozen stockからとり、inoculate する。frozen stock は、−80度の冷凍庫から取り出して溶かし、白金耳、又はピペッターで0.5−1 μlをinoculateする。frozen stockは、使用後すぐに液体窒素で凍らせ、−80度の冷凍庫に戻す。確実に液体窒素で凍らせ、−80度で保存する限り2−3年繰り返しこの操作をしても発現レベルの変化が起こることはない。
注2)TBは先に述べたように、入手先が重要であり、これを厳守することで発現は安定する。 この点には、多くのヒトが異議を唱えるところかと思うが、これは絶対である。

2)250 ml のTB with 100 μg/ml amp and 40 μg/ml kanを3 Lのフェルンバッハフラスコにに用意する。これに一夜培養液を2.5 ml (100 倍希釈)加え、37度で3.5−4時間激しく(250 rpm) 撹拌する。OD 0.8-1.0となるまで撹拌培養する。

注3)私は論文では常にOD 0.8-1.0と書いてきたが、いつからかこれを測定したことはなく、常に肉眼で誘導のタイミングを決めている。そして肉眼での判断が最も現実的であると信じている。

3)このタイミングで、以下の最終濃度となるように必要な化合物を加える。
0.5 mM IPTG for the transcriptional induction of the target protein
50 μg/ml Amp
4 mg/ml arabinose for the induction of GroES and GroEL
1 mM δ-ALA (a precursor of heme biosynthesis)

4)培養器の温度を28度に下げ、回転数も200 rpmとし、15−16時間培養する。

注4)温度を下げるのはinclusion bodyの形成を避けるためである。
注5)回転数を下げるのは、培養が進み菌の濃度が高くなると培養液の粘度が上がり、高い回転数では十分な浸透が得られなくなる為である。
注6)15−16時間の培養を行う為には、夕方の6時頃に誘導をかけることができるように実験を計画する必要がある。夕方6時頃に誘導を始めると、翌朝9時頃に培養液のpHを測定することとなり、大腸菌を回収するタイミングをちょうど良い時間に合わせることができる。

5)15−16時間の培養の後、培養液のpHを測定する。pHが7より低い場合は、pHが7になるのを待って大腸菌を低速遠心で回収する。
注7)大腸菌を回収するタイミングとpHの関係は非常に重要であるので、pHと発現の関係のみを取り上げて、培養条件その2で詳述する。







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