ミクロゾームのP450は、DEAE Sepharoseを素通りするものが多く、大部分のものには前回示した方法が使えるであろう。DEAE-Sepharoseの後は、通常はSP-Sepharoseを用いて最後の精製をする。大部分の肝臓のミクロゾーム型のP450には、SP-Sepharoseを用いることができる。しかし、疎水性が高い膜蛋白質の場合には、SP-Sepharoseは強すぎるため(恐らく樹脂上でのP450密度が高くなりすぎるため)樹脂上で凝集し、沈殿となって溶出する、あるいは、樹脂に吸着して出てこない、などの問題が起こる。
このような現象が起きた時は、もう一段弱い陽イオン交換樹脂である1)CM-Sepharoseを用いる、2)吸着容量の低いHydroxyapatiteを用いる、3)detergentを増加または変更する、4)基質または阻害剤を加える、などの選択肢がある。3)、4)に関しては、精製後に抜く、置換するなどの具体的方法を予め持っておく必要がある。
ウシP450c21は、ウシの副腎皮質からでも精製できる比較的扱い易いタンパク質であり、SP-Sepharoseで精製する事が可能である。ここでは、一例としてこの精製過程を示す。精製サンプルは、この後、ラマンスペクトルにより解析を行う目的があり、NaCholateの不純物による蛍光を避ける為、detergentを高度に精製されたNaCholateに置き換える操作も加えている。従って、ここで用いるNaCholateは同仁堂の精製NaCholateである。
必要なBuffer:
Buffer I:
20 mM KPi (7.2)
20% Glycerol
0.1 mM DTT
0.1 mM EDTA
1% NaCholate
0.1 mM PMSF
20% Glycerol
0.1 mM DTT
0.1 mM EDTA
1% NaCholate
0.1 mM PMSF
Buffer J:
50 mM KPi (7.2)
20% Glycerol
0.1 mM DTT
0.1 mM EDTA
1% NaCholate
20% Glycerol
0.1 mM DTT
0.1 mM EDTA
1% NaCholate
樹脂はSP-Sepharose
(Fast flow)を内径>2.7 cmのカラムに7-8 cmの高さとなるように、buffer Iで平衡化して詰める。(8 cmの高さとして、bed volume 46 cm3 となり、この約40%、18 mlがvoid volumeとなる。)
1)DEAEからの溶出画分をCentriprep 50 (Millipore)を用いて全体で20-25mlとなるまで濃縮する。50ml の
Falcon tubeに回収する。
2)濃縮したサンプルをbuffer
Iで2倍に希釈する。(透析をしても良いが、時間がかかり、経験が少ないと沈殿により多くのタンパク質を失う)
3)希釈したサンプルをカラムにチャージする。この流速は、5-6秒に1滴。
4)Buffer JにNaClが50 (10ml), 100 (10ml), 150 (10ml), 200 (10ml), 250 (15ml), 300 (15ml), 350 (20ml), 400 mM (25ml)となるように加えたものを用意しておく。
5)樹脂表面のぎりぎりまで、タンパク質の溶液を落とし、1-2 ml のBuffer Jを用いて、カラム壁面を洗いながら、タンパク質の溶液を完全にカラムの中に入れる。
6)4)のBufferを順番にカラムに加えて行く。50 mMが大部分カラムに入ったところで、100 mMを加えるようにする。流速は、最初は6秒に1滴、P450が動き始めたら、12秒に1滴とする(バンドが広がる感じがあれば、16秒に1滴程度まで落とす)。ここでは、manual でグラジエントの溶出を用いるが、グラジエントメーカーを用いても差し支えは無い。
7)
P450の場合、色がついているので、目で見て回収するフラクションをその場で決めることができる。回収するフラクションは、集めて、Amicon
Ultra-15 Centrifugal Filter Unitsを用いて、濃縮、および、bufferの置き換えにより、イオン強度の調節をする。
注1)親水性のタンパク質では、これほどの注意を払って、manual
gradientを用いる必要はない。
注2)親水性タンパク質でも、最後の溶出までは、NaCholateは入れておいた方が安全であり、抜きたければ、少ない量をAmicon
Ultra-15 Centrifugal Filterで抜けば良い。カラム上でdetergentを抜こうとすると、時として総てのサンプルを失うリスクがある。
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