原子力発電の継続か原発ゼロを目指すのか、直ちに総ての原発を停止、廃棄を選ぶのか。
原子力発電は、福島の事故により、西は静岡県にまで及ぶ日本の約3分の1を汚染したというべき甚大な被害をもたらした。それでも尚、電力会社と一部経済界の首脳は無批判な運転の継続と新規の建設を主張して止まない。
電力会社は、原発関連企業は、そして政府も莫大な投資をして強引に原発を推進してきた。ここで引けば、気が遠くなるような損失を被る。もはや、引くに引けないというところであろうか。
安全性などは、これまでと同様に何とでも云い成せる。技術者、専門家などは、都合の良いことを言ってくれる者をかき集め、危険性を指摘するような専門家は排除すれば良いだけのことである。原子力関係の専門家は、総て国の予算で原子力関連の研究をしているのであれば、利害の無い専門家などという者は存在しない。
ここで、原発ゼロの方向に舵を切るとしても、日本国民は、莫大な経費を負担して、汚染度の処理をしなければならず、使用済み燃料の処理、各地の原発施設の廃棄処理をする必要がある。想像もできない程の莫大な金額を税金で負担せざるを得ない。核廃棄物を100年、200年に渡り安全に保存管理する費用とはいったいどれほどのものか。
それでも、核廃棄物処理のめども無い状態で原発を再稼働しようとすることは、ほとんど狂気に等しい。福島の原発事故で東日本が広範に汚染された。次に関西電力の何処かの原発で事故が起これば、西日本の広い範囲が汚染されることとなる。琵琶湖が汚染されれば、大阪は上水道が汚染される。もし瀬戸内海が汚染されれば、どうなるのか。瀬戸内海はいわば閉じられた海であり、汚染が浄化するまでにどれほどの時がかかるか想像もつかない。
これは経済の問題ではなく、日本という国の生死の問題であることを電力会社の首脳、原発関連企業、政府首脳は考える必要がある。
2013年4月30日火曜日
2013年4月24日水曜日
大腸菌でタンパク質を発現する法22:全体像
ここまで、大腸菌でタンパク質を発現する法について一連の流れを解説した。一旦これを整理する。大腸菌での発現は、ここに示す道筋にそって丁寧に進めるならば、これまでの経験では、90%以上の蛋白質をある程度以上のレベルで発現することができる。どうすれば良いかという道筋がはっきりしていることが、これから大腸菌で蛋白質を発現しようとしている研究者には大きな助けとなると期待している。
1)ベクターと大腸菌株は、pET17とBL21と決めてしまう。
2)予め蛋白質の発現レベルの測定法を決める。
注)これは非常に重要である。SDS PAGE では発現レベルは確認できない。
3)発現したい蛋白質(標的蛋白)のcDNAを入手する。
注)現在では大部分のヒトのcDNAが購入できるようになっている。
4)標的蛋白及び類維持するファミリーが過去に大腸菌で発現されたことがあるかどうかを検索する。もし発現されていれば、N-末端とC-末端の配列をどのようにしているか注意する。
また、nativeと発現形(N-末、C−末等の変換形)に対して、hydropacy
plotを取り、変化を比較しておく。
5)標的蛋白がヒトのものであれば、得られる総ての動物の標的蛋白のアミノ酸配列をデータバンクから落とし、alignmentにより解析する。
6)N-末端とC-末端の配列を決めて、対応するcDNAをPCRにより作成し、完全にシークエンスをしてDNA配列を確認した後、pET17に組み込む。
7)BL21(DE3)とBL21(DE3)にpGro12 (GroES/GroEL発現プラスミド)を導入したものの両方に発現プラスミドを導入する。
注)Chaperone Plasmid Set (21000円)として、あるいはシャペロン発現プラスミドを持つtransformantとしてタカラで類似のものを購入できる。
8)Transformantが生えて来たら、まずover night culture をして、その一部をfrozen stockとし、一部を用いてIPTG screening を行い、発現用に用いるコロニーの候補を3個程度取る。
ここで、発現誘導の為のIPTGを決めることができる。(通常は0.5-1 mMで可能)
9)前項のコロニーをover
night cultureし、一部はfrozen
stockとし、0.25 ml を25 ml (125 mlの3角フラスコを使用)のTB mediumで希釈して小スケールでの培養を開始する。
10)培養は、37度、できるだけ激しく撹拌する。約3−4時間でOD600が0.7-1.0となる。
11)IPTG、およびシャペロン誘導の為の試薬、その他のもの(P450の場合には、ヘムの前駆体であるd−aminolevulinic acid)を加え、培養温度を28度に落とし、14-20時間培養を続ける。
12)培養液のpHをモニターし、pHが上昇して7になった時、遠心により大腸菌を回収して、蛋白質の発現量をチェックする。
注)pHが7になるまでに、2-3点サンプリングして、pHと発現レベルの変化を確認をしておくと分かり易い。
13)最も発現レベルの高いtaransformantのfrozen stock のみを残し、他は捨てておく。
注)シャペロンの有無による比較データをしっかり取っておくと、見せる時に都合が良い。
14)大スケール(500
ml)程度で、もう一度発現を行ってみる。
15)目的に十分な発現量が得られた場合には、発現の検討はここまでとして精製へと進む。十分な発現量が得られなかった場合、先に延べた方法で、蛋白質の内部に変異を導入する。
2013年4月22日月曜日
ドイツの鉄道の駅には改札がない
2007年9月、私はザールブリュッケン(Saarbrücken)で向こう一年程を過ごす為に、フランクフルト空港に降り立ち、始めてドイツに足を踏み入れた。案内板に従い、列車の切符売り場に無事たどり着き、ザールブリュッケンまでの切符もドイツ版みどりの窓口で無事購入して、「切符売り場を出て右手の階段を下りたところ」という窓口のお姉さんの教えに従って、切符売り場を出て右手の階段を下りると、そこはいきなりプラットフォームであった。少々うろたえて辺りを見回すと行き先表示の案内板があり確かにここで良さそうであった。しかし、ぼんやりして改札を素通りしてしまったのかと切符売り場まで戻ってみたが、やはり改札らしきものは無かった。
日本のような親切ではあるが騒音とも取れる頻繁なアナウンスも無く、色々な情報をあちこちに掲示して、その地を知らないものにはかえって戸惑う程に多すぎる掲示板がある訳でもない。列車の発着予定を示す案内板も簡単に一つ(電光表示でもなかった気がする)あるだけで、これもまた不安であった。ともかく、列車の車体についている行き先表示を何度も確認したうえで、時間通りにやって来た列車に大型のトランクを抱えて乗りこみ、約2時間半、多少の不安を抱きつつ、自転車で乗ってくる乗客や外の景色などを見ながら無事ザールブリュッケンに到着した。列車を降りて、切符をしっかり手に持って、トランクを抱えて階段を上り、出口に向かって歩くといつの間にか駅から出てしまっていた。
これは、非常に居心地の悪い感覚であった。その後一年の間、何かと世話になったブリッタ(Britta)が迎えに来ていなければ、もう一度ホームに戻ってみただろう。ブリッタに尋ねてドイツには改札が無いことを確認して、疑問符は脳裏に点滅しつつも始めて安堵した。それにしても、フランクフルトからザールブリュッケンまでの間、検札も無かったことは今でも不思議な気がする。その後何度か列車に乗る機会があったが、ドイツ国内ではついに検札を受けたことはなかった。蛇足ながら、ドイツの自動券売機は、日本のものとはずいぶんおもむきが異なり、大学の構内(大学は列車の駅からはバスで20分程の距離)にもバスと列車の自動券売機がおいてあり、私はここでバスの定期券を買っていたが、ブリッタにゆっくりやって貰いながらメモをして何度か自分で定期を買うことを試みたがついに一度も自分では買えないままであった。
日本のJRをはじめとする鉄道の駅では、高度に発達した自動券売機と自動改札が当たり前である。日本の自動改札の機能は驚くべきで、新幹線の改札などは切符を2枚入れても瞬時に乗車券と特急券を読み取り、出る時には機械が特急券のみを抜き取り乗車券は戻ってくる。切符に問題があれば瞬時にゲートが閉まる。あのスピードと正確さには信じがたいものがある。故障が少ないことも大変なものがある。比較にもならないが、アメリカのバルチモアで電車に乗った時には、総ての自動券売機は故障の張り紙がしてあり、自動改札も一番端の人がいるところのみ使用可能で、自動の部分は総て使用できない状態であった。アメリカのシステムは日本に近いが、似て非なるものである。
日本人はどこへ行こうとしているのだろうか。日本では、乗客全員から正確に料金を取ることを目指して、想像を超える高度の機能を備えた自動改札口を作り出した。その費用が乗車料金に含まれていることは間違いないものの、自動改札の製造によって多くの雇用が支えられたこと、高度の技術的進歩が有ったことは疑いない。ドイツでは、基本的に改札口自身を放棄した。従って、自動改札口を製造する為の産業も技術の進歩も無かったが、無ければ無いでことはすむことをドイツが証明している。列車を走らせるにあたって、乗客からどのようにして正確に料金を徴収するか、その最初のところで、日本とドイツは正反対の方向に向かったといえそうである。両者ともに特に重大な問題もなさそうであり、どちらの方法が優れているのかという議論はあまり意味が無く、どのような社会を望むのかということのようだ。
2013年4月16日火曜日
都営地下鉄・バスの24時間営業?
政府は、都営地下鉄・路線バスの24時間運行を検討しているという。都市への重点的な規制緩和により日本全体の競争力を上げる意図らしい。政府はどのような社会の構築を目指しているのか。24時間運行している地下鉄をもって、世界で最もビジネスに便利な都市であると誇るような日本を、私は望まないが。
ドイツでは、州により異なるが多くの州で条例により、日曜日は飲食店以外の小売店を閉店としている。スーパー、デパートなども休みである。それで、特に困ったことがあろうとも思えない。晴れた日曜日には、店が開いていないにもかかわらず多くの家族連れがウィンドウショッピングで商店街を楽しそうにそぞろ歩き、子どもは長いソーセージが両側にはみ出したパンを買ってもらい嬉しそうにしている。川沿いの公園では、町中の人が出て来たかと思う程に、幼い子どもを連れた家族がピクニックをしてくつろぎ、あるいは家族で川沿いのサイクリング道を走っている。朝早くに店を開くこともなく、夜遅くまで店を開いていることもない。
日本では、土・日曜日は稼ぎ時とばかりに小売店は力を入れる。最近では正月も元旦から店を開く小売店が増えている。コンビニエンスストアの場合には年中無休24時間営業が当たり前である。これは、本当に便利なのだろうか。これに加えて、地下鉄・路線バスの24時間営業を検討していると聞くと、政府はどのような社会を目指しているのかという疑念を抱く。国会議員の先生方は、自分たちが夜中の2時、3時に電車に乗るような仕事をしたいと希望しているのだろうか。
アメリカで、24時間営業のスーパーに夜の12時を過ぎて行ったことがある。当然従業員の数は少なく、客もほとんど居ない。生鮮食品の棚は既にほとんど片付けられており、売り場が広いだけに不気味である。パーキングにも車はほとんど停まっておらず、何時強盗が出てもおかしくない。
ドイツの選択は、休みの日には多くの家族が一緒に過ごすことのできる緩やかで穏やかな社会ではなかろうか。日本の政府が目指すのは、休みの日にも家族はバラバラで同じ時を過ごすことがほとんどない社会だろうか。どうも殺伐とした社会を作ろうとしているとしか思えない。
コンビニは本当に深夜営業をする価値はあるのだろうか。単に犯罪を増やしているだけではないのか。小売店は、正月まで店を開けて売り上げを上げないと倒産するのか。企業の社会的な役割とは、利益を上げ、それを資本家と従業員に還元することである。これは金銭だけではなく、従業員家族の安定した生活の保障、幸福な暮らしを与えることも含まれるのではないか。真夜中まで走っている電車に乗って仕事をする社会を、そのような暮らしを誰か目指したい人はいるのだろうか。
大腸菌でタンパク質を発現する法21: 膜蛋白質4 変異の導入
大腸菌で発現する為にN−末端とC−末端を変更したウシP450c21は、pET/BL21系を用いてGroES/GroELの共発現を行うと、1200−1300 nmol/L cultureの発現レベルを安定して得ることができる。
しかし、このタンパク質は疎水性が高く、精製することにも多くの制限があり、また、結晶化を試みてもすべての結晶化溶液で簡単に沈殿を生じて、結晶を得る可能性は無いに等しいと考えられた。結晶化の可能性を求める為に、変異を導入しタンパク質の親水性を上げる必要があった。しかし、酵素活性は維持したままでなければならない。
これを実現する為の方法について、次の仮説を立てた。
1)Hydropacy plot によって、タンパク質の親水性を判定できるとする。
2)ほ乳動物のP450c21はすべてステロイド21−水酸化活性が主たる活性であるとする。従って、ウシのP450のアミノ酸を他のほ乳動物の配列に置き換えても活性に大きな影響は無いとする。
3)タンパク質の親水性が上がれば、発現レベルも上昇する傾向があると考えることは正しいとする。
4)Hydropacy plotの親水性の最も高いピークを更に高くることで効率よくタンパク質の親水性を上げることができるとする。
5)Hydropacy plotの最も親水性の低い親水性の谷(疎水性のピーク)を高くすることでタンパク質の親水性を上げることができるとする。
上記仮説に従って、P450c21に変異を導入し、より親水性が高く結晶化が可能なタンパク質を作ることを試みた。
まず、Hydropacy plotにより、最も高いピークと最も低い谷の位置を見る。P450c21の場合、244番のRが親水性の最も高いピークを示している(左図一番上の図)。親水性の最も深い谷の底は423番のLである。
ここで、得られる総ての動物のP450c21のアミノ酸配列をデータバンクから落とし、アラインメントによって244と423の位置およびその周辺のアミノ酸がどれほど保存されているかを見る。
保存性が高い場合には変異の導入により活性を変化させる恐れが高いので、アミノ酸が保存されていない位置での変異の導入をデザインする。
可能性の高い位置に変異を導入して一つ一つHydropacy plotを取って確認する操作によって変異の導入を決定する。
その結果、423のLを直接Aに置き換えることにより、親水性の谷底は -2.86から-2.63に上がることが分かった。親水性のピークは243のTの位置をRに置き換えることにより、2.57から2.97に上がった。そこでこの二つの変異を導入したクローンを作製し発現してみた。
実際に発現してみると、変異を導入する前は、1200-1300 nmol/L cultureであったものが、L423Aは2900 nmol/L cultuer、223R423Aのdouble mutationでは、2000 nmol/L cultureまで発現レベルが上昇した。
発現レベルからして変異体はいずれも親水性が上がり、安定な形で発現されていると考えられるが、L423Aが最も親水性が高いかと言えば、実際に精製してみると、精製過程を見る限りやはりdouble mutationの方が親水性は高いと判断された。
結果として、私の立てた仮説は概ね正しく、活性の解析を行ったところ酵素活性に変化は認められず、親水性が高く結晶化が可能なタンパク質を得ることができた。
結論としては、アラインメントにより他の動物などとアミノ酸配列を比較して、親水性を挙げる変異の候補をピックアップし、hydropacy profileにより、変異の導入前後で、蛋白質全体の親水性を効果的にあげる変異を導入すれば、活性に影響を与えない変異の導入により、親水性を高めることができる。
親水性が上がれば、大腸菌内での蛋白質の安定性も上がり、発現量の増加も期待できる。また、精製過程での樹脂への吸着、凝集も減少し、回収率が上がるとともに、精製も容易になる。
しかし、このタンパク質は疎水性が高く、精製することにも多くの制限があり、また、結晶化を試みてもすべての結晶化溶液で簡単に沈殿を生じて、結晶を得る可能性は無いに等しいと考えられた。結晶化の可能性を求める為に、変異を導入しタンパク質の親水性を上げる必要があった。しかし、酵素活性は維持したままでなければならない。
これを実現する為の方法について、次の仮説を立てた。
1)Hydropacy plot によって、タンパク質の親水性を判定できるとする。
2)ほ乳動物のP450c21はすべてステロイド21−水酸化活性が主たる活性であるとする。従って、ウシのP450のアミノ酸を他のほ乳動物の配列に置き換えても活性に大きな影響は無いとする。
3)タンパク質の親水性が上がれば、発現レベルも上昇する傾向があると考えることは正しいとする。
4)Hydropacy plotの親水性の最も高いピークを更に高くることで効率よくタンパク質の親水性を上げることができるとする。
5)Hydropacy plotの最も親水性の低い親水性の谷(疎水性のピーク)を高くすることでタンパク質の親水性を上げることができるとする。
まず、Hydropacy plotにより、最も高いピークと最も低い谷の位置を見る。P450c21の場合、244番のRが親水性の最も高いピークを示している(左図一番上の図)。親水性の最も深い谷の底は423番のLである。
ここで、得られる総ての動物のP450c21のアミノ酸配列をデータバンクから落とし、アラインメントによって244と423の位置およびその周辺のアミノ酸がどれほど保存されているかを見る。
保存性が高い場合には変異の導入により活性を変化させる恐れが高いので、アミノ酸が保存されていない位置での変異の導入をデザインする。
可能性の高い位置に変異を導入して一つ一つHydropacy plotを取って確認する操作によって変異の導入を決定する。
その結果、423のLを直接Aに置き換えることにより、親水性の谷底は -2.86から-2.63に上がることが分かった。親水性のピークは243のTの位置をRに置き換えることにより、2.57から2.97に上がった。そこでこの二つの変異を導入したクローンを作製し発現してみた。
実際に発現してみると、変異を導入する前は、1200-1300 nmol/L cultureであったものが、L423Aは2900 nmol/L cultuer、223R423Aのdouble mutationでは、2000 nmol/L cultureまで発現レベルが上昇した。
発現レベルからして変異体はいずれも親水性が上がり、安定な形で発現されていると考えられるが、L423Aが最も親水性が高いかと言えば、実際に精製してみると、精製過程を見る限りやはりdouble mutationの方が親水性は高いと判断された。
結果として、私の立てた仮説は概ね正しく、活性の解析を行ったところ酵素活性に変化は認められず、親水性が高く結晶化が可能なタンパク質を得ることができた。
結論としては、アラインメントにより他の動物などとアミノ酸配列を比較して、親水性を挙げる変異の候補をピックアップし、hydropacy profileにより、変異の導入前後で、蛋白質全体の親水性を効果的にあげる変異を導入すれば、活性に影響を与えない変異の導入により、親水性を高めることができる。
親水性が上がれば、大腸菌内での蛋白質の安定性も上がり、発現量の増加も期待できる。また、精製過程での樹脂への吸着、凝集も減少し、回収率が上がるとともに、精製も容易になる。
2013年4月7日日曜日
大腸菌でタンパク質を発現する法20;膜タンパク質3 C-末端
高発現を得る為のN-末端の配列としては、N-末端のアミノ酸10個分程度の範囲で、1)核酸配列として、mRNAの5'末が固い2次構造を取らないようにAT-richにかえておく、2)セカンドコドンにGCT (Ala)を採用する、3)膜アンカーを取り除く、4)アラインメントにより位置を置換すべき位置を決めて、高発現を得ている同種蛋白質のN-末のアミノ酸配列で置き換える、という4つの点に注意を払えば良いことがわかった。
この内のセカンドコドンについては、私は十分な検討はしておらず、GCTを使えばうまく発現できてきたというに過ぎない。一般に、大腸菌での蛋白質の発現は、発現・精製をして、その蛋白質を用いて種々の解析を行うのが目的であり、発現は研究をすすめるに必要な最初のステップである為に、うまく発現できれば先へ進めることが優先され、大腸菌での発現の更なる理解の為に時間を使うことはない。結果的に、十分な理解がなされないままに、唯一つの方法として用いられ、未だよくわからない点は多々あり、正しくはないことが信じられているケースも多くある。
ともあれ、現時点での理解の範囲で、解説を続ける。
この内のセカンドコドンについては、私は十分な検討はしておらず、GCTを使えばうまく発現できてきたというに過ぎない。一般に、大腸菌での蛋白質の発現は、発現・精製をして、その蛋白質を用いて種々の解析を行うのが目的であり、発現は研究をすすめるに必要な最初のステップである為に、うまく発現できれば先へ進めることが優先され、大腸菌での発現の更なる理解の為に時間を使うことはない。結果的に、十分な理解がなされないままに、唯一つの方法として用いられ、未だよくわからない点は多々あり、正しくはないことが信じられているケースも多くある。
ともあれ、現時点での理解の範囲で、解説を続ける。
N-末端の次は、C−末端について議論を試みる。特に避ける理由がない限り、C-末端には6xHis(6個の連続したヒスチジンのタグ)を付ける。これは発現した後、Ni(Ni-NTA Agarose, Qiagene等)またはCo (TALON® (Cobalt), TakaraBio等)を利用したアフィニティーカラムにより精製を容易にする為である。標的蛋白質により、単に6xHisを付けるだけで発現レベルが高くなることがある。この現象の実にそれらしく受け入れ易い説明として、一般的にはHisタグが保護的に働くのだと考えられている。しかし、個人的には、恐らく、末端のアミノ酸配列を親水性とする為に、蛋白質の水溶液中での安定性が増す為ではないかと考えている。これは、hydropacy
profileを取って比較してみると分かり易い。図に示すように、ヒトP450sccおよびウシP450c21のC-末端のhydropacy
profileで比較してみると、His-tagを付けることによりC-末端部分の親水性が増すことが分かる。
Fig 1はヒトP450sccのHis Tagの有無によるHydropacy Profileを比較したものである。上図は本来のC-末端、下図が6 x His Tagを加えたものである。C-末端部の親水性(Hydrophilicity)が2.59から2.99に上がったことが分かる。 Fig 2は大腸菌での発現の為にN-末端をラットCYP2C3に置き換えたものと、そのC-末端に6 x Hisを加えたものを比較している。この場合には、P450sccに比べC-末端の親水性がより大きく変化していることが分かる。 この二つのP450について、His Tagの有無による発現レベルを比較したデータは取っておらず、His Tagを付けたものの発現しか見ていないが、両者ともに1 μmol/L cultureを超える発現量を得ることができる。
Fig 1はヒトP450sccのHis Tagの有無によるHydropacy Profileを比較したものである。上図は本来のC-末端、下図が6 x His Tagを加えたものである。C-末端部の親水性(Hydrophilicity)が2.59から2.99に上がったことが分かる。 Fig 2は大腸菌での発現の為にN-末端をラットCYP2C3に置き換えたものと、そのC-末端に6 x Hisを加えたものを比較している。この場合には、P450sccに比べC-末端の親水性がより大きく変化していることが分かる。 この二つのP450について、His Tagの有無による発現レベルを比較したデータは取っておらず、His Tagを付けたものの発現しか見ていないが、両者ともに1 μmol/L cultureを超える発現量を得ることができる。
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