2013年8月13日火曜日

研究者の非正規雇用3:大学院生のパート雇用と奨学金1

 ヨーロッパの国々、アメリカなどでは、大学院生は大部分が給与として奨学金を得て博士号を取る為の研究を行っている。私が知るのは理系、特に生命科学系の大学院生であり、文系に関しては無知であり、私が知る範囲が前提の話である。
 
 米国では、大部分の米国人大学院生は、特にアルバイトをしなくとも暮らして行ける程度の金額をNIHの奨学金で給与として受けることができ、研究に専念する事が可能であり、大学院生同士で結婚してもなんとか暮らして行ける。給与であるから当然返済の必要は無い。

 日本では、これに匹敵するのは日本学術振興会の特別研究員DC1DC2と呼ばれる奨学金制度であり、平成25年度は、DC1DC2を合わせて約2000人が採用された。これは文系も合わせた総ての大学院後期課程での採用人数である。この採用率は、面倒でほとんど意味のない申請書を提出した申請者の20-30%である。これは、欧米諸国に較べると非常に少なく、また、博士課程前期(修士課程)の学生は対象外であるので、欧米諸国とは比べることもできない程に不備な状態にある。

 日本育英会の奨学金は、もう少し人数が多く、恐らく、国立大学の理系の学生であれば、半数かそれ以上が受けることができるのではないか。とはいえ、無利息の場合、博士課程前期(修士課程)で月額5万円又は88千円、博士課程後期で月額8万円又は122千円の貸与であり、当然返済の義務を負う。以前は指定の研究職、教育職につくと返還免除の制度があったが、今はこれも無くなっている。

 一方で、日本の科学分野では、非常に大きな割合を占める文科省の科学研究費補助金(科研費)を獲得することで、大部分の大学等の研究者の研究費が賄われている。この科研費では、大学院生が教員の研究を手伝いその労働に対して科研費から謝金を払う事ができた。名目を変えた一種の奨学金である。今回、科研費の規則が変更され、大学院生に謝金を支払うことはできなくなり、パートタイムとして大学院生を雇用し、研究補助としての給与という名目の事実上の奨学金を学生に対して支払う形となった。つまり、科研費で大学院生をパートタイムとして雇用出来るようになった。根本的な問題に目を閉じて実利を追うと割り切るならば、ほんの少し良くなった。


 大学院生に奨学金を出し易くなる変更なので、誰も反対する者はいないであろうが、私にはどうにも役人特有の姑息な制度の積み重ねのように思える。どのような障害があるのか知らないが、何よりも学振の特別研究員制度の申請書類の簡素化と予算の拡充、現在の10倍程度までの拡充を図るのが、本来あるべき姿である。その上で、これらでカバーされない大学院生を科研費で雇用できるとするならば、研究者の裾野を広げることになる。

0 件のコメント:

コメントを投稿