2013年8月15日木曜日

原子力発電考4:電力不足→再稼働の図式

原子力発電再稼働の布石
 「福島の原子力発電の事故は悲惨なものであり2度と繰り返してはならないものである。従って、原子力発電の安全性には、厳しく対処すべきである。しかし、現に電力の安定供給が脅かされており、十分に安全性を確認した後であれば、原子力発電の再稼働もやむを得ないかもしれない。再稼働は仕方が無いが、安全性を厳しく検証しなければならない」というような論旨の記事やコメントを、最近、目にし、耳にする事が増えてきたように感じる。

 これは再稼働に反対のポーズを見せながら、再稼働やむなしとの雰囲気を作ろうとするものであり、巧妙な再稼働推進の意図を感じる。電力会社の国民に対する一種の洗脳、非常に多くの企業集団からなる原発産業の意志、日本政府の、アメリカ政府の意図でさえもあり得る。テレビをはじめとするジャーナリズムも、スポンサーに逆らえる程、公正中立ではあり得ない。

 もはや、アメリカにおいても、国内で新しく原子力発電所を建設する事は出来ない状況にあるが、海外には原子力発電プラントを輸出し、これまでの投資に対し、十分に見合う以上の利益を上げたいのであろう。この点は、日本政府と原発関連産業も同じ穴の狢である。

 しかし、福島において事故を起こし、現在においても、原子炉建屋は手つかずのままであり、汚染水の処理にも目処が無く、ただただ環境中に放射性化合物を拡散させている現状を内に抱えながら、一方で、日本の原子力発電技術は安全だとして海外にプラント輸出をしようと目論むのは、信義にもとる行為である。これは、現在親日的な国の人々の信頼を裏切る行為である。

電力不足を補うには再稼働も仕方が無い?
 電力が不足するから、安全性さえ厳しくチェックすれば、再稼働も仕方が無いというのは、ずいぶん物わかりの良い話である。常軌を逸した物わかりの良さというべきかもしれない。

 疑問点1:誰が電力が不足すると言っているのか。電力会社であり、それ以外ではない。
 
 疑問点2:誰が電力の需給をデーターに基づき予測、推定しているのか。電力会社である。

 つまり、電力不足は、原発再稼働を前提として電力会社各社が主張しているに過ぎず、真実がどうであるのか客観的に検証されてはいない。これは、泥棒に自らをしばる縄をなわせるに等しい。まずは、第3者委員会を設置し、電力需給状況の実態把握と、予測に対する対処法の検証を行い、妥当かつ可能な対処法の予測と提言を求めるべきである。当然ながら、この委員会には、電力会社関係者、原発産業関係者、これらから研究費を受けているような研究者、政府関係者は含まれるべきでない。

まず、電力の需給状況の精査と客観的予測
電力の供給を確保する方法として、原発の再稼働とその他の方法のリスクと経済性をも含めた客観的比較と妥当な選択
これらを、利害性を排除して検証した結果を知りたいものである。常に一方的な、都合の良い話ばかりではないものを知りたいものである。

原子力発電を廃炉にする能力が電力会社に有るのか否か
 現在、電力各社は、原子炉を自前で廃炉にする能力を持ち合わせているのだろうか。核燃料棒を取り出して、安全に、半永久的に保存する場所の用意は出来ているのか。既に積み重なっている使用済み核燃料もしかり。恐らく、何ら明確な目処は立っておらず、国まかせと考えるがどうであろうか。

 燃料棒を取り出した後の原子炉は、どのように処理する計画なのか。明確な廃炉行程が有るかどうかも疑わしい。原発に対する危惧は、電力会社には、自力で老朽化した原発を廃炉にする能力もないことである。事故が起これば、それに対処する技術も能力も無く、単に自ら停止した原子炉を廃炉とする能力も無い状態で、尚、再稼働を図る考えは、私には理解できない。原発は、ただ止めているだけでも莫大な保守管理の経費が掛かる事であり、電力各社の経営陣は気が気では無かろう。しかし、彼らは、原発に対して、万が一何かが起こった時の恐怖を感じない程に欲ボケしてしまっているのか。

放射性物質は誰にもどうにも出来ないだろう。
 放射性物質は、一旦環境中に放出されてしまえば、もはや誰にもどうすることもできない。通常の汚染化合物であれば、集めて焼却処理をすることができる。様々な産業廃棄物、生活廃棄物も何らかの方法で処理し、何とか安全な物へと形を変えることができる。しかし、放射性物質は、どのように形を変えようと、放射性物質であり、ただ集めて、可能であれば濃縮して、(人間の寿命からすれば)永久保存する以外の方法は無い。福島で生じている放射性物質の内でも、とりわけトリチウムは問題が多い。一旦、水分子となったトリチウムは、ただの水でありこれを分けて濃縮することは、少なくとも現実的な経済性の範囲では、できない。福島の汚染水の流出は、マスコミが騒ぐ以上に深刻な問題である。

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