2013年4月16日火曜日

大腸菌でタンパク質を発現する法21: 膜蛋白質4 変異の導入

大腸菌で発現する為にN−末端とC−末端を変更したウシP450c21は、pET/BL21系を用いてGroES/GroELの共発現を行うと、1200−1300 nmol/L cultureの発現レベルを安定して得ることができる。
しかし、このタンパク質は疎水性が高く、精製することにも多くの制限があり、また、結晶化を試みてもすべての結晶化溶液で簡単に沈殿を生じて、結晶を得る可能性は無いに等しいと考えられた。結晶化の可能性を求める為に、変異を導入しタンパク質の親水性を上げる必要があった。しかし、酵素活性は維持したままでなければならない。

これを実現する為の方法について、次の仮説を立てた。
1)Hydropacy plot によって、タンパク質の親水性を判定できるとする。
2)ほ乳動物のP450c21はすべてステロイド21−水酸化活性が主たる活性であるとする。従って、ウシのP450のアミノ酸を他のほ乳動物の配列に置き換えても活性に大きな影響は無いとする。
3)タンパク質の親水性が上がれば、発現レベルも上昇する傾向があると考えることは正しいとする。
4)Hydropacy plotの親水性の最も高いピークを更に高くることで効率よくタンパク質の親水性を上げることができるとする。
5)Hydropacy plotの最も親水性の低い親水性の谷(疎水性のピーク)を高くすることでタンパク質の親水性を上げることができるとする。

上記仮説に従って、P450c21に変異を導入し、より親水性が高く結晶化が可能なタンパク質を作ることを試みた。

まず、Hydropacy plotにより、最も高いピークと最も低い谷の位置を見る。P450c21の場合、244番のRが親水性の最も高いピークを示している(左図一番上の図)。親水性の最も深い谷の底は423番のLである。
ここで、得られる総ての動物のP450c21のアミノ酸配列をデータバンクから落とし、アラインメントによって244と423の位置およびその周辺のアミノ酸がどれほど保存されているかを見る。
保存性が高い場合には変異の導入により活性を変化させる恐れが高いので、アミノ酸が保存されていない位置での変異の導入をデザインする。
可能性の高い位置に変異を導入して一つ一つHydropacy plotを取って確認する操作によって変異の導入を決定する。
その結果、423のLを直接Aに置き換えることにより、親水性の谷底は -2.86から-2.63に上がることが分かった。親水性のピークは243のTの位置をRに置き換えることにより、2.57から2.97に上がった。そこでこの二つの変異を導入したクローンを作製し発現してみた。
実際に発現してみると、変異を導入する前は、1200-1300 nmol/L cultureであったものが、L423Aは2900 nmol/L cultuer、223R423Aのdouble mutationでは、2000 nmol/L cultureまで発現レベルが上昇した。
発現レベルからして変異体はいずれも親水性が上がり、安定な形で発現されていると考えられるが、L423Aが最も親水性が高いかと言えば、実際に精製してみると、精製過程を見る限りやはりdouble mutationの方が親水性は高いと判断された。

結果として、私の立てた仮説は概ね正しく、活性の解析を行ったところ酵素活性に変化は認められず、親水性が高く結晶化が可能なタンパク質を得ることができた。

結論としては、アラインメントにより他の動物などとアミノ酸配列を比較して、親水性を挙げる変異の候補をピックアップし、hydropacy profileにより、変異の導入前後で、蛋白質全体の親水性を効果的にあげる変異を導入すれば、活性に影響を与えない変異の導入により、親水性を高めることができる。

親水性が上がれば、大腸菌内での蛋白質の安定性も上がり、発現量の増加も期待できる。また、精製過程での樹脂への吸着、凝集も減少し、回収率が上がるとともに、精製も容易になる。




2013年4月7日日曜日

大腸菌でタンパク質を発現する法20;膜タンパク質3 C-末端

高発現を得る為のN-末端の配列としては、N-末端のアミノ酸10個分程度の範囲で、1)核酸配列として、mRNAの5'末が固い2次構造を取らないようにAT-richにかえておく、2)セカンドコドンにGCT (Ala)を採用する、3)膜アンカーを取り除く、4)アラインメントにより位置を置換すべき位置を決めて、高発現を得ている同種蛋白質のN-末のアミノ酸配列で置き換える、という4つの点に注意を払えば良いことがわかった。
この内のセカンドコドンについては、私は十分な検討はしておらず、GCTを使えばうまく発現できてきたというに過ぎない。一般に、大腸菌での蛋白質の発現は、発現・精製をして、その蛋白質を用いて種々の解析を行うのが目的であり、発現は研究をすすめるに必要な最初のステップである為に、うまく発現できれば先へ進めることが優先され、大腸菌での発現の更なる理解の為に時間を使うことはない。結果的に、十分な理解がなされないままに、唯一つの方法として用いられ、未だよくわからない点は多々あり、正しくはないことが信じられているケースも多くある。
ともあれ、現時点での理解の範囲で、解説を続ける。

N-末端の次は、C−末端について議論を試みる。特に避ける理由がない限り、C-末端には6xHis(6個の連続したヒスチジンのタグ)を付ける。これは発現した後、Ni(Ni-NTA Agarose, Qiagene等)またはCo (TALON® (Cobalt), TakaraBio等)を利用したアフィニティーカラムにより精製を容易にする為である。標的蛋白質により、単に6xHisを付けるだけで発現レベルが高くなることがある。この現象の実にそれらしく受け入れ易い説明として、一般的にはHisタグが保護的に働くのだと考えられている。しかし、個人的には、恐らく、末端のアミノ酸配列を親水性とする為に、蛋白質の水溶液中での安定性が増す為ではないかと考えている。これは、hydropacy profileを取って比較してみると分かり易い。図に示すように、ヒトP450sccおよびウシP450c21のC-末端のhydropacy profileで比較してみると、His-tagを付けることによりC-末端部分の親水性が増すことが分かる。
Fig 1はヒトP450sccのHis Tagの有無によるHydropacy Profileを比較したものである。上図は本来のC-末端、下図が6 x His Tagを加えたものである。C-末端部の親水性(Hydrophilicity)が2.59から2.99に上がったことが分かる。 Fig 2は大腸菌での発現の為にN-末端をラットCYP2C3に置き換えたものと、そのC-末端に6 x Hisを加えたものを比較している。この場合には、P450sccに比べC-末端の親水性がより大きく変化していることが分かる。  この二つのP450について、His Tagの有無による発現レベルを比較したデータは取っておらず、His Tagを付けたものの発現しか見ていないが、両者ともに1 
μmol/L cultureを超える発現量を得ることができる。

2013年3月5日火曜日

大腸菌でタンパク質を発現する法19;膜タンパク質2

P450の発現の為のN−末端をどのようにして決めれば良いのか。前回アンカー部分を除くとしたが、ここではhuman Aromatase (CYP19、アロマテース)を例にとり、もう少し具体的に説明を加える。
左図は、ヒトCYP17, CYP21, CYP19という3種のミクロゾーム型P450のアミノ酸配列のアラインを示したものである。P450の場合は、大きなスーパーファミリーを形成しているので配列のアラインにより、膜アンカー、ベーシック、プロリンリッチ部位を決めることは容易である。実際には、20以上のP450をアラインすることにより、基本的な構造を決める。
その結果、アロマテースは左上部の図のように、アミノ酸40残基の相対的に長い膜アンカー部位を持ち、その下流にベーシック部位、プロリンリッチ部位を持つことが分かる。
膜タンパクを大腸菌で発現する基本的な考え方としては、まず発現の目的から、アンカー部位を残すか否かの判断をすることから始める必要がある。アロマテースの発現の目的は、ともかく大量の精製タンパク質を得て可能な解析を行うことであった。また、膜アンカーを除いても酵素活性には影響が無いことは知られていた。従って、発現に有利であることを優先して、アンカー部位を除いて発現する道を選択した。
次の選択は、ベーシック部位から発現させるとして、既に、良く発現できそうな N-末端配列が知られており、直接の例はなかったが、左下図に示すように、アラインによる位置決めをしてCYP2C11のベーシック部位の上流にMetAlaを付けた配列を使って、アロマテースを発現することとした。
後に、CYP21を発現した際には、CYP2C3のベーシック部位を利用した。これらの経験からすると、高いレベルの発現を得ることができる他の類似の酵素のN−末端をアラインにより位置決めをして用いることが、高発現の秘訣であると考えられる。
その他の発表されているP450の発現およびこれまでの経験からすると、N−末端の8-10残基のアミノ酸配列は、疎水性のペップチドよりも親水性ペプチド、恐らく幾つかのArgかLysを含むペプチドの方が、高い発現レベルを得る為には有利であると考えられる。
更にこの部分のRNAの核酸配列は、緩いRNAの2次構造を取ることができるAT-richな配列が有利であると結論づけられる。










2013年3月1日金曜日

研究者の非正規雇用化1

かつて、ポスドクというものが存在しなかった頃、博士号を取るとすぐ助手(現在の助教相当)となるのが順当な研究者の進路であった。その頃は、助手になると雑用が多く研究の時間を確保することが難しいことが問題であった。その為に、研究に専念できるようなポジションとして米国式のポスドク制度を導入すべきだという流れがあった。
これは、文科省の公務員の定数削減に利用され、助手の定員を削り、プロジェクトで雇用するポスドク制度として一気に導入が進むこととなった。その結果、日本で研究者の非正規雇用が急激に一般化してしまった。問題は、ポスドクを助教の下に置いたことにあり、当時の助手よりももっと待遇の悪いポジションとしてポスドクを作った結果、研究者の価値、労働条件をひどく低下させたことにある。
米国では、博士号を取って企業に就職するといきなりマネージャークラスとなり、年収もポスドクの倍以上が約束されるのが通常である。従って、その年収の低さ、待遇の悪さ、将来性の無さ故に、米国人はポスドクになるものは非常に少なく、大部分の若者は、博士号を取って企業に就職することを目指している。結果的に米国では大部分のポスドクは外国人であり、博士課程の大学院生さえも、米国人の割合はかなり低い。これは、米国の科学の発展を強く妨げていると個人的には感じている。それでも、米国の科学に活力があることの理由は、歴史の流れの中で、ヨーロッパから高い教育を受けた研究者が大量に米国に移住してきた為であろう。第2次世界大戦の前後、ソビエト連邦の崩壊、チェルノブイリの原発事故など、定期的に大きな戦争、変革、事件があり、その度に多くの研究者が米国に移住した。いわば、米国の科学の活力は、持続的に流入する外国人によって維持されてきたと言っても過言ではない。
 しかし日本では、研究者の地位を低下させ、不安定なものとして、しかし、米国のように外国人を受け入れる社会基盤は存在しておらず、一方で、望んでもそのような社会基盤ができるとは考えられない。博士号を取得して企業に就職しても、米国のようなメリットは全く無い。
多くの外国人、特にアジア系の外国人留学生に取って、日本で博士号を取ることの意味は、博士号を取ってアメリカに行く過程であろう。日本は恐らく世界でも最も平和な国であり、裕福な国でもあろう。もし博士号を取った後の道が日本国内でも開けるのであれば、現在よりも多くの留学生が日本にとどまるであろうが、そのような時代が来ることは希望的な夢物語としか思えない。
文科省の役人やその助言機関の大昔研究者であった人たちは、国際化、グローバル化という言葉が好きなようであるが、日本人の学生が博士号の価値を感じられないような現状で、外国人の留学生を増やせば、日本の科学研究の将来は無いとしか思えない。
まずなすべきは、博士号を取れば正規の職に就ける体制の確立であり、博士号の価値を本来のあるべき姿に戻すことである。最大の問題は、人件費を削減する為に助手の下にもっと給与の低い地位として、非正規雇用のポスドク制度を作ったことにある。
それほど、公務員の人件費の削減を図りたいのであれば、アメリカをモデルとしたグローバル化とやらを進めたいのであれば、アメリカのように教授の給与の固定部分を50−70%とし、残りの部分を教授が獲得した研究費から出すように定めれば良い。 これによって、定員削減をせずとも、大学の教官の人件費の固定部分は十分に減少するはずである。
とはいえ、議員定数の削減もできない日本で、大学教授の給与の固定部分を半減させるような変革を起こせる力が働くべくも無いが。












2013年2月22日金曜日

大腸菌でタンパク質を発現する法18;膜タンパク質1

市場にある治療薬の7割以上が膜タンパク質を標的とするものであるが、膜タンパク質は、一般に疎水性が高く、大腸菌で高いレベルで発現することは困難であることが多い。

P450は、小胞体膜、又はミトコンドリア内幕に存在する膜タンパク質であり、肝臓の小胞体膜上のP450は様々な外来性物質および内在性の物質の代謝を担っている。これらの薬物代謝系のP450は、広範な臓器、組織にも分布し、局部的な薬物代謝にも重要な役割を果たしている。多くのがん細胞にも発現しており、抗がん剤の有効性にも影響を与えることはよく知られている。 従って、これらの薬物代謝系のP450を大腸菌で発現し、精製酵素を用いてヒトの薬物代謝系をin vitroで再構築することにより、新規化合物のヒトでの代謝を解析する試みは重要である。あるいは、精製酵素から結晶構造を解析し、構造に基づいた新規治療薬の開発を進めようとする試みがなされている。

その結果、P450の大腸菌での発現と精製、結晶化による構造解析は、急速な進歩を遂げた。ここでは、P450という膜タンパク質の大腸菌での発現に焦点を当てて解説してみる。

P450は、N−末端のシグナルペプチドが合成された時点で、SRP (signal recognition particle) により認識され、小胞体膜上の運ばれ、N−末端のアンカー部分を膜に埋め込む形で、膜上で残りの翻訳、フォールディング、ヘムの導入が行われる。従って、小胞体膜上のP450は、rough microsome で合成される。

大腸菌でこれを発現するにあたり、当初は、膜へのアンカー配列を残したまま発現することが試みられ、Barnesの配列(MALLLAVF)が頻繁に用いられた。この配列は、アラインメントにより位置を決めて他のP450のアンカー配列と置き換えることにより、有効に働き多くのP450の大腸菌での発現を成功に導いた。

発現の目的にもよるが、その後、アンカー配列を除くことでより高い発現レベルが得られることが分かり、現在では大部分の場合、N−末端のアンカー部分を削除して発現されている。また、アンカー配列の有無にかかわらず、これらミクロゾーム型のP450は発現レベルが低い状態では大腸菌の膜画分に回収されるが、発現レベルが高くなると大部分が可溶性画分に回収される。この為に、P450を大腸菌から回収する際には、detergentを含む溶液で膜を可溶化し全体を回収する。

 



2013年2月9日土曜日

大腸菌でタンパク質を発現する法17:Transformantsの不安定性

発現ベクターを導入したtransformantsは不安定である。

pETに発現したいタンパク質のcDNAを組み込んだ発現プラスミドを、BL21系の大腸菌に導入し、これをAmpを含むplateに開き、生えてきたコロニーを3個程単離し、 Amp入りのTBまたはLBでovernight cultureをして、その一部を小スケールでの発現に用い、一部をfrozen stockとする。発現の結果の良かったクローンのみを残し、残り2つのコロニーからのstockは捨てる。
この操作により、標的タンパク質の発現を確認した単一コロニーからのtransformantsのfrozen stockを確保できる。
以後の発現には、このstockからovernight cultureを作り、それを100倍程度に希釈して発現に用いる。通常はこれで十分な再現性の良い発現が可能であるが、既に述べてきたような様々な要因によって発現レベルが極端に下がることがある。高い発現が得られなくなってしまった時、多くの指導者は、もう一度Amp plateにfrozen stockを開き直して単一コロニーを拾うように指示する。pETを保持しているものを取り直すという意味であるが、悪化の一途をたどることが多い。これは、最初にcolony isolationにより取ったtransformantsが安定なものではないことを意味している。

採取した単一コロニーをAmp入りのTB又はLBを用いてovernight cultureを作り、これをLB-AmpとLB-Amp無しのplatesに開いて、生えてくるコロニーの数を比較してみることで、この不安定性は容易に確認できる。Amp入りのLBでovernight cultureをしても、一晩の培養中に、多くの大腸菌がpETを失う為に、二つのプレート間に生えてくるコロニーの数はLB-Ampプレートの方がコロニーの数はずっと少ない。

このような、transformantsの不安定性の理由は、発現系のリークによるものと考えられる。教科書の図では、IPTGの誘導により標的cDNAの転写が起こり、IPTGが無いときは転写は抑制されており、転写のリークはほとんど無視できるように思ってしまいがちである。しかし、通常は、思う以上の転写のリークがあり、IPTGが無い場合でも、標的タンパク質が作られ、大腸菌に生命の脅威を与えている。一方、Amp耐性を与えるbeta-lactamaseは分泌型である為に培養液中のAmpはある程度以上大腸菌が増殖した時点で無効化される。 このような環境下で、大腸菌は生命の脅威から脱する為に何らかの変化を遂げる。多くの大腸菌は発現ベクターを排除する道を選び、Ampが無効化された培養液中ではストレスも無い為、増殖も早く相対的に多くのポピュレーションを占めることとなる。
つまり、転写のリークの為に、大腸菌は常に変化する。先に述べたIPTG screeningを行うことにより、大腸菌は安定化し、少なくともプラスミドを失う大腸菌は激減する。





2013年2月2日土曜日

大腸菌でタンパク質を発現する法16:Extraction buffer

標的タンパク質を大腸菌で発現した後、大腸菌から抽出する為には、以下のExtraction bufferを用いて超音波破砕を行う。このExtraction bufferを使用する理由について解説する。

Extraction buffer: 50 mM potassium phosphate, pH 7.4, 500 mM sodium acetate, 0.1 mM EDTA, 0.1 mM DTT, 20 % glycerol, 1.5% sodium cholate, 1.5% Tween 20, and 100 μM PMSF
(PMSFは使用直前に加える。pHはすべての成分を加えた後、最後に、KOHで調整する。)

1) 50 mM potassium phosphate:緩衝能の高いリン酸緩衝液を用いる。中性付近としておけば、広い範囲のタンパク質に使用できる。

2) 500 mM sodium acetate:イオン強度を高めることで、ionic interactionを防ぐ。酢酸塩とすることである程度の緩衝作用も期待している。

3)0.1 mM EDTA, 0.1 mM DTT:いつも必要とは限らないが、気持ちで加えている。

4)20 % glycerol:タンパク質の安定化、および液体窒素で凍結して−80度で保存する為。

5) 1.5% sodium cholate, 1.5% Tween 20:detergentとしてこの組み合わせを用いる理由は、Inclusion body意外はほぼ可溶化でき、後で除きやすい為である。通常よりも高い濃度を使用していることの理由は、少ない抽出液で抽出し、扱う溶液の体積を小さくできることを目的としている。
 detergentはタンパク質を失活・変性させると信じている向きも多いが、私はそのような心配をしたことは無い。cholateと Tween20のようなタイプのdetergentにより、タンパク質が変性することは無く、活性を測定できなくなることがあるとしても、変性の為ではない為に、条件を整えれば、活性を戻すことができるのが普通である。
 可溶性タンパク質の扱いに対して、detergentを使うことを嫌う人は多い。しかし、可溶性タンパク質もかなりの割合で、detergentにより安定化する為、通常、私は、可溶性タンパク質の扱いにもdetergentを用いる。
 detergentとglycerolは、タンパク質の安定化には非常に有効であり、常に使用するべきと考えている。